「共通テスト」は無償でいい?

後藤 英語4技能の検定や記述式問題の導入中止で大学入試改革が混迷して、受験生に迷惑をかけたのだから、大学入学共通テストなんて無料にしろという話が出ていた。この話のキモは、受験料を無償化して、大学入試センターは大学に対する成績提供料で食べていけばいいという点にあります。

安田 成績提供料って安い。500円ぐらいでしょう。だからこれを上げればいい。ゼロをもう1個付けたって大学は平気じゃないですか。

後藤 出願はオンラインですから、大学にとって受験料収入はぬれ手であわ、です。事務作業はほとんどありません。やることは何かというと、調査書が届いたことの確認と合否判定するぐらいですね。そこに1万数千円もかけているのか? かけているわけがない。

安田 千葉工業大学は、コロナ禍を考えて共通テスト利用入試の受験料をタダにしますけどね。

後藤 無償化されれば、“受験は団体戦”で後ろまで引っ張るために使っても許されます。その際、前回申し上げたように、共通テストが大学のためのものだけではなく、高校のものだというようにしないとまずい。

安田 共通テストの作問には高校の先生も入るようになりましたよね。

後藤 まだ本格的には入っていないと思います。参考意見を聞く程度です。そこを変えなくてはいけない。というのも、共通テストがコンピューターを利用したCBT(Computer Based Testing)化したとき、どこで実施するのか、どの端末を利用するのかという話につながるからです。英語4技能の検定会場が大学だと1つの会場で多くの受験生を収容できるのに、それを高校での実施に切り替えた。あれは絶対にCBTを想定しているからだと思います。

安田 そうですよね。でも、そんなにたくさん問題を作れるのでしょうか。CBTになると、過去問がなくなるのではという話もあります。

後藤 過去問という概念はなくなるでしょう。運転免許の試験のように、定型的な問題をたくさん作って、ドリル型みたいになる。共通テストが資格試験化することで、各大学が実施する個別試験が本格的な選抜試験になっていくと思います。

 ところで、文科省のあり方会議(大学入試のあり方に関する検討会議)って何をやっているのか。会議の最初の頃は英語4技能の話しかやっていませんでした。そんなの入試全体のほんの一部の話です。