【大学入試2022】女子学生と留学生が示すこれからの進学公立の短期大学が四年制化して、2022年新たに発足する川崎市立看護大学(川崎市幸区)

地方創生の教育面での切り札の一つが、新たな工学部の設置にある。とはいえ、失われた30年間で金欠状態の日本にとって、取り得る選択肢は限られている。女子大のあり方も含め、これからの受験生が進学先を考えるためのヒントを、40年にわたって大学受験を見つめてきた二人が語り合う。(ダイヤモンド社教育情報、人物撮影/平野晋子)

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地方の受験生が直面する学費の壁

後藤 就職率が高いことから、女子大の人気が上がっています。ただ、実学志向と言っても、エッセンシャルワーカー養成機関という側面が女子大には全体的にまだ強い。

安田 そうした女子が進む先は、看護や介護系が多いのが現状です。

後藤 女子短大から4年制になった女子大が多かったため、保育や栄養系も多いです。前回、奈良女子大に工学部が新しくできるというお話をしました。産業構造の変化に合わせて、女子大にも情報を含む理工系の学部学科が求められています。ただ、既に雇用している大学の教員を入れ替えられない状況をどう乗り越えるか。このジレンマは女子大に限ったことではないのですが。

安田 国立大以外の地方の理工学系私立大は、募集的にも厳しいところが多いように思います。

後藤 施設設備投資も必要ですが、定員割れでそのための体力もない。校地を確保して校舎も建てるとなるとなかなか厳しいです。文部科学省幹部から、この問題について具体的な相談を受けました。地方創生のため、地方にも工学部をつくっていくにはどうしたらいいのか、という問い掛けでした。少なくとも初年度の入学者が卒業するまで、つまり完成年度までの支援が必要ですね。日本の未来を考えると、このくらいは投資すべきです。そして、それに合わせて人文社会科学系の定員を相対的に減らしていくのでしょう。

安田 県内に工学部のなかった高知県では、公設民営方式で私立の高知工科大(香美市)を創設しましたが、その後に公立大に移行しています。「山陽小野田市立山口東京理科大学」や「公立諏訪東京理科大学」のように、私立大が公立化すると、その学校どこにあるの?という感じの大学名になったりしてしまう(笑)。

後藤  確かに、地方では私立理工学系の大学を国や自治体が面倒をみないと存続が難しい面はありますね。とはいえ、地方の受験生を東京の私立大理工系学部に行かせられるかというと……。

安田 5割増し程度の文系ならまだしも、私立大理系学部の授業料は国公立大に比べて2倍以上になりますから、高くて行かせられない。4年間、大学院を含めると6年間払い続けることを考えると、浪人してでも地元の国公立大にと親は思ってしまいます。産業界に工学部6年化の声があるにしても……。

後藤 ロースクール(法科大学院)の失敗と同様、親のカネ頼みではねえ。そして、学位に対するリスペクトがない。人文社会科学系の大学院がふるわないのは、修士を取っても、コンサルタント業界の一部を除けば待遇が良くなるわけではないことが大きい。理工学系の修士なら初任給も違いますし、ポストもついてきます。

 一方で、理工学系では修士での就職の条件が良くて博士に進まないといった問題があります。まず、経済界に博士取得者をもっと評価するように、ぜひ改善してもらいたいですね。それによって大学院進学者が増えて社会の高度化が進むといった好循環を生むんだと思います。就職後も同様で、修士、博士課程を修了したら、それを評価して給料が上がるようにしてほしいですね。