2025年に向けて、高校での新しい学習指導要領の導入と共通テストの試行錯誤が並行して進む。かじ取りをする文部科学省は大丈夫なのだろうか

教員養成に潜む闇

後藤 前回少し触れましたが、少子化による人口減を考えると、地方の大学進学率を上げる必要があります。医学部では地方の医師不足を反映して、9年間その県の指定医療機関で働くことが条件の「地域枠」が設けられています。法曹でいえば、ひまわり基金法律事務所のようなものです。教員の世界でも「地域枠」という話が出ています。

安田 宮城教育大(仙台市)が今度の入試から設ける「地域定着枠」のことですね。主に体育や音楽、家庭科など実技系教員を東北各県に確保するため、総合型選抜で募ると。

後藤 地方国立大の教員養成系学部には「教員にならない・なれない」問題があります。そうした教育学部は同じ大学の中でも比較的入りやすい。学費も安い。家から通えるので行く。学生がこういう意識ですとおのずと教員の志願率が下がります。特に教員になりたくて行くわけではないですからね。

 そこで、これまでそうした層の受け皿になっていた教員免許取得を卒業の前提としない「ゼロ免課程」は教育学部から外に出そうと、地域系の名称を冠した“四文字学部”がつくられました。

安田 そうはいいつつ、東京など大都市圏の教育委員会は地方で採用試験をやっていますよね(笑)。

後藤 教育は斜陽産業ですから、教育学部は人気がない。小学校の教諭は理数系の苦手な人が多いし。

安田 数学や理科を教えるのに、行き場がないポスドク(博士研究員)を使おうという話が一時期ありましたね。

後藤 ほんと、その方がいい。その科目を好きな人が教える方が。内発的な動機が教える側になくては、生徒に「数学っておもしろいだろう、わくわくするだろう」を伝えられない。

安田 教員免許制度でも、普通免許状や臨時免許状とは別に、特別免許状の要件緩和の話が進んでいますね。その考え方の巧拙は置いておいても。

後藤 外部人材の活用ということで、英語やプログラミングなどに。これまでの学校は新しい科目を導入するなど足し算でやってきました。これから新しい学びが入ると時間数も足りなくなってくるので引き算が必要になります。こうしたときに教科を横断したり教科間の重複を調整したりするカリキュラムマネジメントができないような教員をいつまで育成し続け、採用し続けるのかというのが私には疑問です。その前に外部人材にきっちりとした講習をした上で相応の報酬を払えるのかという問題もありますけどね。