人のいないエリアで
自動飛行を目指す
一方で、「農薬散布では、大容量タンクを搭載する機種も導入されていますが、バッテリーの性能が上がらず、航続時間が15分程度に限定されてしまう」(島田事務局長)という技術課題がある。農薬散布であれば1ヘクタール当たり8リットル程度を必要とする。大きなタンクを備えれば広く散布できるが、その分だけ重くなり、バッテリーの持ちが悪くなる。
大容量の農薬を散布するためには無人ヘリコプターを活用する方法もあるが、ドローンの機体価格が150万~400万円程度であるのに対して、無人ヘリは1500万~4000万円しており、導入コストが大きい。
現在無人ヘリは水田で100万ヘクタール、ドローンは40万~50万ヘクタールをカバーしていると推測されている。ドローンの低価格性を生かしながら、1回当たりの散布面積も大きくできれば、ドローンはさらに普及されるものとみられている。
そうした上で今、農業用ドローンとして最もホットな技術開発テーマになっているのが、「無人航空機の高度利用のためのレベル3飛行の実現に向けた技術の確立」(島田事務局長)だ。レベル3飛行とは、無人地帯での補助者なし目視外飛行を指し、人のいないエリアにおいて自動で飛行するもの。
レベル3を実現するには、まだ多くの課題がある。例えば、自動航行が可能なハイスペックな機体の開発と無人航空機用のエアルートの設定や飛行支援機器の整備(農地上のハイウエー作り)、無人航空機の航空管制システムの整備、さらには多用途利用が可能なアタッチメントの開発などがテーマになる。そのどれもがレベル3の実現に欠かせないものだが、課題の総合的な検討や関係機関との調整などは農林水産航空協会が自ら手を挙げる形で担っている。
レベル3運用は、無人航空機の高度利用の扉を一段と大きく開くことになる。「ドローン活用策次第では、私たちが想像すらできなかった新しい農業の姿を創造できるでしょう。当面はレベル3飛行の実現に向け、課題解決を進める一方で、ドローンの活用の前提となる機体整備場や教習機関の地方立地などにも力を注いでいます」(島田事務局長)。