DX、標準化の他に商慣行見直しも大事

――そのためには、どのような考え方や取り組みが必要でしょうか。

西村 これからの物流に欠かせないのはデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)です。今、さまざまな物流現場でデジタル機器やロボットの導入などアナログからデジタルへの置き換えが進んでいます。サプライチェーン全体の最適化や効率性を高めるためのデジタルプラットフォームなども登場しています。こうした新たな技術やツールが花開いていけば、数年後に物流生産性は飛躍的に高まっていくはずです。ただ、そのためには、多くのサプライヤーの参画や情報共有を可能にする標準化が不可欠です。ハード・ソフト両面にわたる標準化を進めることで、初めて物流の全体最適化を実現することが可能になります。

目前に迫った「2024年問題」。「持続可能な物流」を構築するにはどうすべきか

加えて、物流や商取引に深く根を張っている商慣行を変えていく必要があります。例えば、「受注日から翌日配送」という標準リードタイムを1日延長して「受注日から翌々日配送」に変えるだけで、共同配送を行いやすくなるなど効率性が格段に高まるはずです。

「可視化」を通じて持続可能な物流の構築を

――「物流の持続可能性」が今ほど問われている時代はありませんね。

西村 物流の持続可能性を阻むのは、労働力不足だけではありません。「環境」「災害・リスク」への対応という課題をいかに乗り越えていくかも重要です。いくらコストや利便性に優れていても、CO2を大量に排出する運び方を選択することはできません。自然災害や国際紛争といったリスクに対する耐性を高めることも、持続可能な物流・サプライチェーンを構築するためには不可欠な要件となります。

目前に迫った「2024年問題」。「持続可能な物流」を構築するにはどうすべきか西村 旦(にしむら・たん)
「カーゴニュース」編集長
1992年カーゴ・ジャパン入社。「カーゴニュース」編集部記者として、物流事業者、荷主企業、関係官庁などを幅広く担当。2011年代表取締役社長兼編集局長に就任。同年、幅広い交通分野での物流振興を目的として創設され、優良な論文などを顕彰する「住田物流奨励賞」(第4回)を受賞。

私は持続可能な物流を実現するために、物流に関わる全てのステークホルダーが同じ情報を共有できる「可視化」の取り組みがより重要になっていくと考えています。カーボンニュートラルを目指すためには、CO2排出量を正確に把握する仕組みが必要ですし、共同物流を進めていくためにはお互いの物流情報が可視化されなければなりません。荷主企業と物流事業者との間で適正取引を実現していくためには、書面契約などによる可視化も欠かせないでしょう。「2024年問題」というピンチを逆にチャンスと捉え、これまで曖昧なままに放置されていた事項を可視化していくことで、新たな物流の価値創造につなげていかなければなりません。

「カーゴニュース」
1969年10月の創刊から50年超にわたり「経済の中の物流」という視点から一貫した報道を行っている物流業界専門紙。物流報道の中に"荷主"という切り口を持った媒体として評価されている。主な内容は荷主企業の物流動向、行政の物流関連動向、トラック、倉庫、鉄道、海運、航空など物流企業の最新動向、物流機器、WMS(倉庫管理システム)ソフトなどの関連ニュース。週2回発行。