創業からこれまでの9年間を振り返ると、東京通信グループの成長は“新たな挑戦”の連続だった。17年には、事業ポートフォリオの拡充を図るため投資事業を開始した。

「投資家から資金を募ってファンドを組成するベンチャーキャピタル事業の他、有望なスタートアップに直接投資する取り組みを創業3年目から行っています。最初から無料ゲーム事業だけで会社を大きくしていこうという考えはなく、新しい領域にどんどん挑戦し、その中から次の“事業の柱”を何本も育てていこうと考えていたのです」(古屋CEO)

事業を育て上げる直接投資と並行して、東京通信グループは積極果敢なM&Aも繰り広げてきた。非連続的な成長を実現するため、「投資」と「M&A」という二つの手法を巧みに使い分けながら、新しい事業に挑み続けている。

直近のM&A案件の中で特筆すべきなのは、「電話占い」と「恋愛相談」だろう。同社は「メディア事業」に続く“事業の柱”として、「電話占い」をはじめとする「プラットフォーム事業」を展開している。

「無料ゲーム」「占い」でグループ売上高が過去最高に。東京通信グループは新たな“事業の柱”を次々と育み、非連続的な成長を追求する「電話占いカリス」は傘下に収めた後に収益を改善し、「SATORI電話占い」もM&A後に同社のマーケティングノウハウを生かして、増収を実現。第2の柱として成長を続けている

「電話占い」とは、ユーザーと占い師をオンラインでマッチングし、プライバシーが守られた状態で電話相談ができるサービスだ。東京通信グループは、このサービスを提供する事業者を21年度に完全子会社化。わずか3年足らずで収益改善を達成した。

「23年度には、サイバーエージェントから別の『電話占い』事業を譲り受け、シェア拡大への道筋を開きました。さらに、派生サービスとしてユーザーの恋愛の悩みに相談員が応える『恋愛相談』サービスも開始しています。M&Aで取り込んだ事業を短期でロールアップし、拡大させる戦略が奏功し、『プラットフォーム事業』を新たな“柱”に育て上げることができました」と古屋CEOは説明する。

こうして、「電話占い」をはじめとする「プラットフォーム事業」は、無料ゲームなどの「メディア事業」に続く“第2の柱”に成長。グループ全体の売上高に占める割合は3分の1(約33%)に達した。

「無料ゲーム事業だけに専念していたら、売上高は今の3分の2程度にとどまっていたということ。新しい事業に果敢にチャレンジした結果、非連続的な成長を実現できたわけです。この成功体験を繰り返しながら、東京通信グループをもっと大きな会社にしていきたい」と古屋CEOは語る。