徹底したデータ分析で事業を選定し、高度なマーケティング力を駆使して事業化
もちろん、無料ゲームだけでも成長を続けることはできるだろう。実際、同社は既存事業の発展にも継続的に力を注いでおり、それがアプリダウンロード数で3年連続国内ナンバーワンの実績に結び付いている。
だが、オーガニックな成長を追求するだけでは、いずれ頭打ちとなる可能性もある。「天井を打ち破って跳躍できる力を備えなければ、継続的な成長は実現できない」と古屋CEOは考えている。
こうして継続的にさまざまな事業に取り組んできたせいか、東京通信グループに対する個人投資家の認識は、人によってまちまちだ。
「創業当初は無料ゲーム1本だったので、20年に東証マザーズ市場(現グロース市場)に上場した当時は、『ゲームアプリの会社』という認識が強かったようです。今でも多くの個人投資家はそう思っているようですが、最近では『Web3銘柄』と見られるケースも増えましたね」と古屋CEOは語る。
ここ数年、東京通信グループは、メタバースや暗号資産といった「Web3」関連の事業にも幅広く取り組んでいる。一部の個人投資家は、そうした取り組みに注目して同社の株を買っているのだろう。
さまざまな事業を行っているため、どの断片を切り取るかによって、東京通信グループの“見え方”は大きく変わってくる。だが、どの事業にも共通するのは、「徹底したデータ分析に基づいて事業を選定し、ゲームアプリ開発で培った高度なマーケティング力を駆使して事業化に取り組んでいること」と古屋CEOは説明する。
「投資先やM&A候補の選定についてもいえることですが、常に5年後、10年後には何が求められているのか? ということを見据えながら事業を選定しています。広範かつ客観的なデータを基に新しいトレンドや有望なテクノロジーを探り出し、その可能性を最大限に引き出せるビジネスを育て上げているのです」(古屋CEO)
トレンドやテクノロジーに対する東京通信グループの“目利き力”は、同社が運用するベンチャーキャピタルファンドの投資実績を見ても分かる。
スニーカーのフリマアプリ「スニーカーダンク」を運営するSODA inc.や、フィンテック(金融テック)を駆使して上場企業向けの法人カードを提供するUPSIDERなど、今では有望ベンチャーとして知られるようになった企業に初期段階から投資しており、選別眼の確かさがうかがえる。