AI時代のビジネスプラットフォーム「WAKONX」が始動

 KDDIは24年5月、日本のデジタル化をさらに加速させるためのエンジンとして、新たなビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」を始動させた。

「WAKON」という名称は、日本固有の精神を失わず、西洋からの優れた知識や学問を取り入れる「和魂洋才」に由来。「X」(クロス)は、あらゆるものを掛け合わせ無限の可能性を生み出していくことを意味する。

「日本は海外の優れた技術やサービスを取り入れて独自にアレンジし、価値を高めることが非常に得意だと思っています。古くは自動車産業に始まり電化製品から食文化に至るまで、多くの好事例があり、コンビニもその一つになりそうです。私は、この和魂洋才によってイノベーションを推進していくことこそが、デジタル化・価値創造をスピードアップさせる勝ち筋だと確信しています」(桑原副社長)

「誰もが思いを実現できる社会を、日本からー」KDDIが始動させたAI時代のビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」とは

 

「誰もが思いを実現できる社会を、日本からー」KDDIが始動させたAI時代のビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」とは「WAKONX」の全体構造。三つの機能群を有するAI時代のビジネスプラットフォーム
拡大画像表示

 このビジネスプラットフォームは、業界ごとのニーズに応じて最適なネットワークを提供する「Network Layer」、企業間のデータをセキュアに蓄積・融合・分析する「Data Layer」、DXに必要なAIやソフトウェアを業界ごとにファインチューニングして提供する「Vertical Layer」の三つの機能群で構成されている。

「Network Layer」については、5G、グローバルに広がるIoTなどの通信回線、そして24時間365日の監視・運用体制が大きな特徴だ。

「われわれは、世界で約5000万回線のお客さま向けにIoTを提供しており、弊社のサービスを利用するコネクティッドサービスは全世界で約2600万回線に上ります(数値は24年5月時点、KDDI調べ)。このように全世界に広がるネットワークを、地域別ではなく全てワンストップで運用・監視ができる点は強みです」と桑原副社長は語る。

 また、世界で45カ所以上もの自社のデータセンターを持っており、これが「WAKONX」の「Data Layer」を支える基盤になっている。KDDIのデータセンターには、世界中のメガプラットフォーマーや通信キャリア、インターネットプロバイダーなど、あらゆる事業者とつながる「コネクティビティデータセンター」があり、AIの利用が加速する中でこの価値は高まっていくと予想できる。そして、より汎用的なAIモデルを構築していくための大規模計算基盤、個社ごとの企業データ同士を安全に掛け合わせて分析するデータクリーンルームの整備を進めている。

「Vertical Layer」では、各業界のデジタル化をスピードアップするため、業界共通で使えるものを標準化していく機能を担っている。例えば、物流業界や放送業界、モビリティ業界など、各業界特有の課題を解決するために最適化されたソリューションを開発し、提供していく。

 これら三つのレイヤー全ての運用やサービス提供に、KDDIの最新AI技術を取り入れることで、企業の業務効率化や自動化を加速させていくのが「WAKONX」の特徴である。

 桑原副社長は、「三つのレイヤーにおいて、AIが非常に重要な要素になってきます。AIの活用に関して、弊社で取り組んでいくことは主に三つです。一つ目は通信設備の自動化と効率化。例えば、基地局のトラフィック予測からお客さまが必要とされる場所を選定します。二つ目は、社内の業務効率化。社内でのAIの利活用が、お客さまに対してより良いサービスを提供していくためのベースになると考えています。そして三つ目はお客さまに提供するサービスそのものです。これには、オープンなAIを活用していくこと、スピーディーにファインチューニングして業界やお客さまに特化したAIを提供すること、そして、通信・映像・音声などの弊社のサービスそのものにAIを組み込んで提供することが含まれています。日本語LLM(大規模言語モデル)とファインチューニングについては、24年4月に連結子会社化した東京大学発の生成AIスタートアップ、ELYZA(イライザ)と共同で進めるなど、グループの力を結集させてプラットフォームを進化させ続け、完成度を高めていきます」と語る。

「誰もが思いを実現できる社会を、日本からー」KDDIが始動させたAI時代のビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」とはKDDIのグループ力を結集して、プラットフォームとしての完成度を高めていくと語る桑原副社長

 これらを後押しするKDDIならではの強みは、「リカーリングモデル」と「マルチコンタクトポイント」だ。

「SIer(システムインテグレーター)が提供するビジネスプラットフォームと『WAKONX』の大きな違いは、通信と運用をベースとした月額モデル(リカーリングモデル)で常時つながっているため、お客さまの利用状況が継続的に把握できることです。状況分析に基づいて、より良い使い方の提案ができ、お客さまにとっての付加価値創出の好循環を生むことができます。また、グローバルに広がるIoTに加えて、約3000万件に上るauの携帯電話ユーザーと約2000店舗のauショップ、資本業務提携したローソンの店舗約1万4600店など、リアルとバーチャル双方で豊富なマルチコンタクトポイントを持っていることも強みの一つです(数値は24年5月時点、KDDI調べ)。これらのリアルな接点を基に、DX、データ活用によって新たなサービスや価値を付加していくことができると考えています」(桑原副社長)