「協調」と「競争」により、あらゆる課題を解決する

 KDDIがこの「WAKONX」の三つの機能群で追求しているのは「日本のデジタル化をスピードアップ」させていくための二つの使命――「協調」と「競争」だ。

「既に業界ごとに、協調が進み始めています。協調できる領域に課題を解決する共通のフレームを作り、サービス化してご利用いただくという発想です。これによって投資が削減されれば、お客さまは自らの付加価値を高めるためのサービス創出や強化、つまり競争領域への注力ができます。この協調と競争の両面をスピードアップさせていくことが、われわれのミッションだと思っています」(桑原副社長)

 この二つの使命の下、企業の事業成長や社会課題に貢献する取り組みは既に幾つも動きだしている。

 例えば、KDDIとトヨタ自動車は、コネクティッドカー向け通信プラットフォームを世界展開しているが、これにはトヨタ自動車のみではなくマツダ、SUBARUも参画している。これは企業間の協調によって、コストを抑えながら社会課題の解決にも貢献する仕組みを作り上げた好事例といえる。加えて、安全・安心なモビリティ社会の実現に向けて、人流および車両のビッグデータと過去の交通事故統計情報などのデータをAI分析し、交通事故発生リスクが高いと予測された危険地点を見える化するソリューションの提供を予定している。

 また、「物流の2024年問題」(トラックドライバーの時間外労働規制)に対応するため、KDDIと伊藤忠商事、豊田自動織機、三井不動産、三菱地所の5社共同で動きだしたのが、フィジカルインターネットの事業化だ。

「誰もが思いを実現できる社会を、日本からー」KDDIが始動させたAI時代のビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」とはフィジカルインターネットのイメージ図(経済産業省フィジカルインターネット実現会議 「フィジカルインターネット・ロードマップ」 <2022年3月> より抜粋)
拡大画像表示

 フィジカルインターネットとは、荷物や倉庫、車両の空き情報などを、業種を超えた企業間で共有し、最適な輸送ルートを選んで効率よく貨物を運ぶ共同配送の仕組みのこと。パケット単位で効率的な情報の送受信を実現しているインターネットの考え方を物流に適用したものであり、インターネット発展の変遷を経験してきた通信事業者だからこそ、その知見が生かせる分野といえる。

 また、最適な輸送ルートの構築に当たっては、全国に中継倉庫を配置する必要があることから、椿本チエインとの合弁で設立した物流倉庫の自動化ソリューションを提供する会社と共に、「物流DX」の推進によって、人手不足という社会課題の解決に貢献することを目指している。

「誰もが思いを実現できる社会を、日本からー」KDDIが始動させたAI時代のビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」とは倉庫自動化のイメージ(写真提供:Nexa Ware)

「WAKONX」で広がる“イノベーションの輪”と日本の未来への可能性

「『WAKONX』は今後もさまざまなパートナーに仲間に入っていただき、イノベーションを起こし、よりお客さまにとって使いやすいプラットフォームに進化し続けることを目指しています」

 桑原副社長は、欧米と比較して日本のイノベーションが進まない大きな理由の一つに「スタートアップ企業」への支援や協業の在り方があるとも語る。米国のようにスタートアップがどんどん成長していく傾向が、日本には現状ない。

「米国のスタートアップ企業のほとんどは、ビッグテックにM&Aされています。対して、日本はIPO(新規株式公開)が半分です。私はスタートアップ企業を応援することも、日本のイノベーションを活性化させるために非常に大切だと思っています。そこで、『スイングバイIPO』という取り組みを始めています。いったん、スタートアップ企業を大企業がM&Aし、支援して事業成長したのち、IPOするという手法です。M&AとIPOという二つの従来の手法をミックスした、新たなアプローチです。また、ここでつながったスタートアップ企業が『WAKONX』にも新たな機能や価値をもたらしてくれることで、よりお客さまに良いものを提供することが可能になります」

 日本は今や人口オーナス期に入り、少子高齢化・人口減少が進み社会保障費などの負担増で、経済成長が阻害される危機に直面している。そんな中でも再び日本経済を奮い立たせ、世界でも通用するようなモデルにしていきたいと、桑原副社長は語る。

「誰もが自分の思いを実現できるような社会を、この人口オーナス期に入った日本で実現したいと思っていますし、日本はそれを世界で最初に実現できる国であると願っています。そうでないと、やっぱり日本の未来は明るくなりませんから」

 KDDIの新たなビジネスプラットフォームで、日本が再び輝きを取り戻す時代がやって来るかもしれない。

「誰もが思いを実現できる社会を、日本からー」KDDIが始動させたAI時代のビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」とは「WAKONX」でワクワク! 笑顔でWを作る桑原副社長
●問い合わせ先
KDDI株式会社
〒105-6490 東京都港区虎ノ門1-17-1
虎ノ門ヒルズビジネスタワー
TEL:03-3347-0077(代表)
URL:https://biz.kddi.com/

・「WAKONX」の詳細はこちら
【関連記事】
「次世代物流倉庫 新会社『Nexa Ware』」
「KDDIグループとフライウィールが生み出す新価値」