育業当事者をチームで支える
「サンキューペイ制度」

もう一つ、男性育業の長期化を促すために導入された制度が、育業中の社員をサポートする同僚への賞与再配分制度「サンキューペイ制度」だ。

「会社が育業を支援する以上、職場に残された同僚に一方的にしわ寄せがいくのは健全ではありません」と佐伯上席執行役員。そこで同社では、サポートの割合に応じて、育業当事者に支払われる予定だった賞与を同僚に再配分して上乗せする仕組みを23年に導入。増加した負担分を適正に評価できるようにしたのだ。

第1回:育児も仕事もチーム戦!“男性中心”の建設業界で、大和リースに「長期育業」が浸透した理由とはサンキューペイ配分表。ネーミングには、同僚への感謝(サンキュー)と、育業当事者への産休(さんきゅう)応援の二つの意味が込められている
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誰にどう再配分するかは、仕事や職場の実態に応じて決まる。スムーズな引き継ぎのために早めの準備を促そうと、同社では「育児休業者サポートプログラム」を策定。人事部と所属部門が連携して、各種制度の申請にまつわる情報提供や、育業した前後の面談、復職後のケアまできめ細かく支援し、スムーズな育業を支えている。

例えば、東京本店の営業部の主任級の男性社員が3カ月育業したケースでは、上司、先輩、後輩の3人でサポートすることが4カ月前に早くも決定。すぐに業務内容の共有などの準備が始まった。営業同行などの具体的な引き継ぎも2カ月間かけてじっくり行い、取引先にも十分な情報共有を図ることができたという。早めの準備のおかげで、同僚の不安や負担感も少なく、皆が笑顔で育業に送り出すことができた。

「社会を見渡せば、仕事でも、家事・育児でも、まだまだワンオペでがんばっている人が少なくありません。しかし、それでは1人にかかる負担が大き過ぎて持続性がない。男性育業の増加は、チームでシェアする仕組みの整備につながり、属人化やセクショナリズムの悪弊を打破する大きなチャンスと捉えています」(佐伯上席執行役員)