「探究」的な学びで変わる大学入試

後藤 高校で「分からなかったらGoogleで検索しなさいよ」と先生が言ったら、生徒が「こんなにたくさん検索結果が出てきました。どれが正解ですか」と聞いてきたという。正解は1つしかないと思い込んでいるのでしょう。正しいと思われるものや自分の欲しいものを見つけることが検索でしょうに、これまで誰も教えてくれなかったのか。

安田 AI(人工知能)が発達していくと、人間は何をやったらいいのかだんだんと怪しくなっていくと思います。多くのことを機械にやらせたとして、人間は何をしたらいいのか。大企業でもノルマを平然と課しているような状況で、自分の意見は求められない。「好奇心をもって」と学習指導要領には書いてありますけれども。

後藤 日本の教育システムは効率性においては世界一だと思います。これまでは一律・一斉に授業をして知識を獲得させることがとても効率的でした。それでずっとやってきたのに、いまでは生産性が低いと言われるのはなぜなのか。そこが問われています。むしろ、多文化共生と言われる時代ですから、異なる意見や立場の人たちが集まって議論をして、それぞれの違いを見つけて理解をして認め合うような学習が必要なんですよね。「脱・一律・一斉」なんです。

 これからの教育は主体的・能動的な学びに質的な転換中です。会社の上司を含め、そうした教育を受けてこなかった人たちを再教育しないと効率が悪くなります。

 大学を高等教育と呼ぶのは、進学率20%程度だった高度成長期のイメージです。初等・中等に続く第三期の教育として、世の中の動きに追いついていけるよう生涯学習を混ぜて考える。大学もリカレントを含めたものにならないと社会構造上すごくまずい。

安田 とはいえ、それは理想論でもあります。コロナ禍の現実はリストラが増えている。学歴を得るため、経済的に苦しい母子家庭であっても頑張って子どもを進学させている。専門学校を入れれば8割が高等教育を受けている現代ですが、社会人になってから大学に行って学んだとしても、採用時には大卒扱いにはしてもらえない。

後藤 これまで学歴イコール学校歴でした。これを学習歴に転換していき、学んだことをブロックチェーン的にきちんと管理していく必要がある。その際に、先生が変われるのかという問題が発生してくると思います。

安田 世の中全体の意識が変わってないのでまだまだ先の話のように思われますが、生産性向上を教育が先導できるよう、国が補助するなどして学びやすくする。社会保障費は毎年1兆円ずつ増加しています。その5%、500億円をギガスクールのように政策誘導に使っていく。