ハードフォークとは、仮想通貨(暗号資産)の基盤であるブロックチェーンが、仕様変更によって永久に2つに分岐することをいう。
投資家からのハードフォークへの関心は高く、ハードフォークをきっかけにして、それに関連する通貨の値動きが活発になることも多い。
今回はそんなブロックチェーンのハードフォークについて、仕組みや過去のハードフォークの事例、ハードフォークによって生まれたおすすめの銘柄などを紹介していく。
- ハードフォークとは、ブロックチェーンが仕様変更によって、仕様の異なる2つのものに永久に分岐すること
- 仕様変更についてコミュニティ内で対立が起こり、旧仕様のブロックチェーンも存続することがある
- 旧仕様のブロックチェーンが存続した場合、新旧どちらかのブロックチェーンで新たな仮想通貨が生まれる
- 新しく生まれた仮想通貨は、エアドロップがおこなわれることもある
数ある仮想通貨取引所の中でDMM Bitcoinは、国内最多クラスとなる24種類もの仮想通貨を取り扱っており、その中にはハードフォークによって生まれたビットコインキャッシュやイーサリアムクラシックも含まれている。
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仮想通貨のハードフォークとは?
ハードフォークとは、仮想通貨の基盤であるブロックチェーンが仕様変更・アップデートがおこなわれることによって、永久に分岐することを指す。
ブロックチェーンでハードフォークが実施されると、新しい仕様となったブロックチェーンと、旧仕様のままのブロックチェーンの2つに枝分かれする。
なお、ハードフォークで生まれた新旧2つのブロックチェーンは、互換性を有しない。
そのため、ハードフォーク後も旧仕様のブロックチェーンが存続する場合は、もともと存在した仮想通貨とは別に、新旧のブロックチェーンのどちらかで新しい仮想通貨が生まれる。
ハードフォークの仕組み
続いてハードフォークの仕組みを解説していくが、その前にブロックチェーンのことを簡単におさらいしておこう。
ブロックチェーンは取引データを記録・管理していくための分散型台帳であり、特に「パブリックブロックチェーン」の場合は特定の管理者は存在せず、不特定多数のネットワーク参加者(ノード)がその運営を担っている。
またその形状は、取引データが格納されたブロックが連なった、1本のチェーンのようになっている。
ハードフォークでは、例えば処理スピードの向上などを目的として、ある一定の時点から生成されるブロックに対して仕様変更を適用し、その変更以前のブロック(ブロックチェーン)については旧仕様のままとなる。
多くの場合、旧仕様のブロックチェーンは不要となって機能を失うのだが、仕様変更に関してブロックチェーンを支えるコミュニティ内で対立があった場合にはその限りではない。
前述のとおりブロックチェーンの中でもパブリックブロックチェーンは、不特定多数のネットワーク参加者がつくるコミュニティによって運営されており、仕様変更に対して意見が対立することもある。
その場合はハードフォーク後に、仕様変更に賛成したコミュニティが運営する新仕様のブロックチェーンだけでなく、それに反対したコミュニティが運営する旧仕様のブロックチェーンも存続していく。
また、2つのブロックチェーンには互換性がないため、それぞれ異なる基軸通貨が必要となり、これまで存在していた仮想通貨も利用しつつ、新旧のブロックチェーンのどちらかで新しい仮想通貨が生まれることとなる。
ハードフォークとソフトフォークの違い
次に、ブロックチェーンにおける「ハードフォーク」と「ソフトフォーク」の違いを押さえておこう。
ソフトフォークとは、互換性を持ちながら、仕様変更によって新仕様と旧仕様のブロックチェーンに分岐することを指す。
ハードフォークと同様に、仕様変更によって新仕様・旧仕様のブロックチェーンへの分岐は発生するのだが、それらに互換性があるため、分岐は一時的なもので、再び1つのブロックチェーンに統合される。
ソフトフォークが起こる仕様変更は、ハードフォークが起こるものと比べると、その内容が軽微なものであることが多い。
ハードフォークは仮想通貨にどう影響する?
ブロックチェーンのハードフォークは、仮想通貨市場にも影響を及ぼすことがある。
ここでは具体的にどういった影響があるか、3つのケースを紹介していく。
- 新しい仮想通貨が誕生することがある
- 新しい仮想通貨はエアドロップされることがある
- 市場全体の値動きに影響を及ぼすこともある
新しい仮想通貨が誕生することがある
先ほども解説したように、ハードフォークによって生じた旧仕様のブロックチェーンが存続する場合は、新旧どちらかのブロックチェーンで新しい仮想通貨が誕生することになる。
また、新しく生まれた仮想通貨は、段階的にさまざまな仮想通貨取引所へと上場していくのだが、国内の仮想通貨取引所は上場に関する基準や審査が厳しく、海外と比べると新規上場に至るものは少ない。
例えば2022年9月にイーサリアムのハードフォークで新しい仮想通貨「ETHWトークン」が生まれたのだが、多くの海外取引所がその取り扱いを開始する一方、本記事執筆時点(2023年1月上旬)では、国内の仮想通貨取引所の中にETHWトークンを取り扱うところは存在しない。
新しい仮想通貨はエアドロップされることがある
エアドロップとは、プロモーションのために仮想通貨を無料で配布するキャンペーンのことだ。
ゼロの状態からブロックチェーンと仮想通貨がつくられたときだけでなく、ハードフォークによって新たな仮想通貨が生まれたときにも、エアドロップがおこなわれることがある。
配布を受けるための条件はさまざまだが、例えば2017年にビットコインのハードフォークで「ビットコインキャッシュ」が生まれた際には、ビットコインの保有者に対して、ビットコインと同数のビットコインキャッシュが無料で配布された。
市場全体の値動きに影響を及ぼすこともある
ハードフォークは、それが実施されるブロックチェーンの基軸通貨の値動きに影響を与えるのはもちろんのこと、特にメジャーなブロックチェーンでおこなわれる場合は、市場全体に影響を及ぼすことがある。
例えば、2017年にビットコインでハードフォークがおこなわれた際には、それが市場に好意的に受け取られ、2017年末から2018年初頭にかけてのバブル相場を引き起こす一因となった。
一方で、ハードフォークは必ずしもポジティブに受け取られるとは限らず、ハードフォーク前後にそれが実施されるブロックチェーンの基軸通貨や関連通貨で、価格の急落が起こるケースもある。
過去のハードフォークの事例
ここで、数あるハードフォークの事例の中から代表的なものを4つ紹介しておこう。
- ビットコインのハードフォーク(2017年8月)
- イーサリアムのハードフォーク(2016年7月)
- ビットコインキャッシュのハードフォーク(2018年11月)
- イーサリアムのハードフォーク(2022年9月)
ビットコインのハードフォーク(2017年8月)
ビットコインのブロックチェーン(以下、ビットコインチェーン)ではこれまで幾度もハードフォークがおこなわれているのだが、その中でも特に知名度が高いのが、2017年8月におこなわれたハードフォークだ。
2017年当時のビットコインは、需要過多によって処理の遅延や手数料の高騰が起こる「スケーラビリティ問題」に悩まされていた。
その問題の解決案として、コミュニティではブロックの容量を拡張する案と、ブロックの容量は変えずに「Segwit」というデータの圧縮技術を導入する案があったのだが、それらのどちらを採用するかでコミュニティ内で対立が発生した。
その結果、ブロックの容量を拡張するアップデートがおこなわれた際に、新仕様のブロックチェーンが生まれる一方で、ブロックの容量が拡張されていない旧仕様のブロックチェーンも存続することとなった。
また、ブロックの容量を拡張した新仕様のブロックチェーンでは、基軸通貨として新たな仮想通貨「ビットコインキャッシュ」が生まれた。
イーサリアムのハードフォーク(2016年7月)
イーサリアムのブロックチェーン(以下、イーサリアムチェーン)では2016年7月に、The DAO事件をきっかけとしてハードフォークが実施されている。
The DAO事件とは、イーサリアムチェーンを基盤としていた分散型の投資ファンド「The DAO」で、ハッキングによる巨額の不正流出が発生した事件のことだ。
この事件を受けて、不正流出があった事実そのものを取り消す仕様変更が実行され、変更後のブロックチェーンが新たなイーサリアムチェーンとなった。
一方で、不正流出の記録が残った旧仕様のブロックチェーンも存続している。こちらのブロックチェーンの名称は「イーサリアム」から「イーサリアムクラシック」へと変わり、基軸通貨であるイーサ(Ether)のティッカーシンボルは「ETH」から「ETC」に変更された。
ビットコインキャッシュのハードフォーク(2018年11月)
前述のとおりビットコインキャッシュは、2017年8月にビットコインのハードフォークによって生まれた。
そうした誕生の経緯を持つビットコインキャッシュで、2018年11月にハードフォークが起こり、また新たな仮想通貨が誕生している。
ハードフォークに至った要因は、DApps(分散型アプリ)を構築できるようにするための機能を実装するかどうかで、コミュニティ内の「ビットコインABC」という開発チームと「ビットコインSV」という開発チームが対立したことだ。
ビットコインABCはDAppsを構築できるようにするための機能の実装を求めたが、ビットコインSVはビットコインから続いてきた思想に反するとして、その機能の実装に反対した。
結果は、ビットコインABCの方針の元に新たな機能が実装されたブロックチェーンが、引き続きビットコインキャッシュのブロックチェーンとなり、ビットコインSVの方針を元にした旧仕様のブロックチェーンは名前を変え、新たな仮想通貨「ビットコインSV」も発行されることとなった。
イーサリアムのハードフォーク(2022年9月)
イーサリアムチェーンでは2022年9月に、スケーラビリティの向上を目的として、コンセンサスアルゴリズムをプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に変更する大型アップデートがおこなわれた。
その際に、コンセンサスアルゴリズムがPoSに変更されたブロックチェーンは、引き続きイーサリアムチェーンとして運営される一方、PoWを用いる旧仕様のブロックチェーンは、「イーサリアムPoW」と名付けられて、存続することとなった。
またイーサリアムPoWでは、新たな基軸通貨として「ETHWトークン」がローンチされた。
おすすめのハードフォーク銘柄
ハードフォークによって生まれた仮想通貨は数多く存在するが、ここではその中でも、これから投資する上でおすすめのものを3つピックアップした。
- ビットコインキャッシュ
- イーサリアムクラシック
- ビットコインSV
ビットコインキャッシュ
名称 | ビットコインキャッシュ |
ティッカーシンボル・通貨単位 | BCH |
コンセンサスアルゴリズム | プルーフ・オブ・ワーク(PoW) |
ローンチ時期 | 2017年8月 |
価格* | 1万3,470円/BCH |
時価総額ランキング* | 26位 |
取り扱いのある主な仮想通貨取引所 |
DMM Bitcoin bitFlyer GMOコイン Coincheck |
関連記事 | ビットコインキャッシュとは? |
先ほど紹介したようにビットコインキャッシュは、2017年8月にビットコインのハードフォークから生まれた仮想通貨だ。
ビットコインチェーンのブロックサイズは1MBなのだが、ハードフォークで生まれたビットコインキャッシュのブロックチェーンはそれが8MBに拡張され、さらに2018年には32MBまで引き上げられた。
また、ブロックサイズが32MBに拡張されるのと同時期にスマートコントラクトも実装され、DAppsの開発ができるようになるなど、分岐元であるビットコインとは違う方向で独自に発展してきている。
現状ビットコインには劣るが、時価総額ランキングで27位*につけており、投資対象としても高い人気を誇っている。*2023年1月8日時点、CoinMarketCap調べ
イーサリアムクラシック
名称 | イーサリアムクラシック |
ティッカーシンボル・通貨単位 | ETC |
コンセンサスアルゴリズム | プルーフ・オブ・ワーク(PoW) |
ローンチ時期 | 2016年7月 |
価格* | 2,610円/ETC |
時価総額ランキング* | 24位 |
取り扱いのある主な仮想通貨取引所 |
DMM Bitcoin bitFlyer GMOコイン Coincheck |
関連記事 | イーサリアムクラシックとは? |
イーサリアムクラシックは、The DAO事件に起因するイーサリアムチェーンのハードフォークによって、2016年7月に生まれた仮想通貨だ。
分岐元のイーサリアムチェーンと違ってイーサリアムクラシックのブロックチェーンは、主にIoT分野での普及を目指している。
また、イーサリアムチェーンでは2022年9月にコンセンサスアルゴリズムの変更がおこなわれたが、イーサリアムクラシックはPoWのまま変わっていない。
PoWは、PoSよりも取引を処理する際に時間やコストがかかることが多い一方で、不正や改ざんに強いという特長がある。
そうした特長を重視して、イーサリアムクラシックの開発チームは、今後もPoWを利用し続けることを表明している。
ビットコインSV
名称 | ビットコインSV |
ティッカーシンボル・通貨単位 | BSV |
コンセンサスアルゴリズム | プルーフ・オブ・ワーク(PoW) |
ローンチ時期 | 2018年11月 |
価格* | 5,660円/BSV |
時価総額ランキング* | 44位 |
取り扱いのある仮想通貨取引所 | Huobi Japan |
ビットコインSVは、ビットコインキャッシュのハードフォークによって2018年に誕生した。
ビットコインチェーンのブロックサイズが1MB、ビットコインキャッシュのブロックチェーンが32MBであるのに対し、ビットコインSVのブロックチェーンは幾度かのアップデートを経て、ブロックサイズが4GB(4,000MB)に拡張されている。
そのため、取引の処理スピードが非常に早く、取引にかかる手数料も安いという特徴を持つ。
なお本記事執筆時点(2023年1月上旬)で、ビットコインSVの取り扱いがある国内の仮想通貨取引所は「Huobi Japan」だけだ。
ビットコインSVに興味がある方は、ぜひHuobi Japanのことも、併せてチェックしておくとよいだろう。
ハードフォークに関するよくある質問
最後に、ブロックチェーンのハードフォークに関してよくある質問を3つ、紹介しておこう。
- ハードフォークがおこなわれるブロックチェーンの通貨を保有していた場合、どのような対処をすべきか?
- ハードフォークで誕生した仮想通貨を入手した場合、税法上どのような扱いになるのか?
- ハードフォーク後に、旧仕様のブロックチェーンの仮想通貨には投資しない方がよいのか?
ハードフォークがおこなわれるブロックチェーンの通貨を保有していた場合、どのような対処をすべきか?
先ほど解説したようにハードフォークは、それが実施されるブロックチェーンの基軸通貨や関連通貨をはじめとして、市場全体の値動きに影響を及ぼすことがある。
ハードフォークが値動きに対してネガティブに作用することももちろんあるため、影響を強く受けそうな通貨を保有している場合は、事前に告知される仕様変更の内容をよく確認してから、ハードフォーク実施時にそのまま保有しておくべきかを判断しよう。
なおハードフォークの直前・直後は、その影響を懸念して、仮想通貨取引所が関連通貨の取引などのサービスを一時的に停止することもある。
そのため、保有し続けるかどうかの判断は、早めにおこなった方がよいだろう。
ハードフォークで誕生した仮想通貨を入手した場合、税法上どのような扱いになるのか?
例えば、すでに市場に上場している仮想通貨を無料で手に入れた場合には、その取得時点における時価を元にして、所得を算出する。
一方で、ハードフォークで生まれた新たな仮想通貨をエアドロップで手に入れた場合、それが市場にまだ上場しておらず、市場価格(経済的価値)がついていない状態であれば、その取得価額は0円として扱われるため課税の対象にはならない。
なお、その新しい通貨が上場して価格が付けられたのちに売却、もしくは使用した際には、所得が発生することとなり、その所得は当然ながら課税の対象となる。
ハードフォーク後に、旧仕様のブロックチェーンの仮想通貨には投資しない方がよいのか?
ハードフォークでは、新旧の仕様のブロックチェーンと仮想通貨が生まれることがあるが、必ずしも旧仕様のブロックチェーンと仮想通貨が性能的に劣るわけではない。
そもそも旧仕様のブロックチェーンも存続するようなハードフォークがおこなわれるのは、仕様変更に関してコミュニティの対立が起こるためであり、そうした対立が起こるのは仕様変更が必ずしもメリットばかりではないからだ。
例えば、2017年のビットコインのハードフォークでは、ブロックサイズを1MBに維持したビットコインチェーンと、8MBに拡張したビットコインキャッシュのブロックチェーンに分岐したのだが、これは一見するとビットコインキャッシュの方が性能的に優れているように見えるだろう。
しかし、ビットコインキャッシュはブロックサイズの拡張によって処理スピードなどを上げる一方で、セキュリティ性能の低下には目をつむっている。見るポイントを変えると、必ずしもビットコインが性能で劣っているとは言えない。
また、ハードフォークで分岐した2つのブロックチェーンは、差別化を図るためにそれぞれ異なる方向性で開発が進められることが多く、ハードフォーク以降の動きでもその価値や需要が大きく変化する。
ハードフォークで生まれる新旧のブロックチェーンと仮想通貨には、根底は同じものでもそれぞれ別の長所と短所があり、役割や目的、将来性なども異なるため、投資の是非はそれぞれの情報を集めて、個別に判断するべきだろう。
仮想通貨のハードフォークのまとめ
今回はブロックチェーンのハードフォークについて、その仕組みや過去の事例などを紹介した。
- ハードフォークとは、ブロックチェーンが仕様変更によって永久に分岐すること
- ハードフォーク後に、旧仕様のブロックチェーンも存続することがある
- 旧仕様のブロックチェーンも存続した場合は、新旧どちらかのブロックチェーンで新たな仮想通貨がローンチされる
- ハードフォークは、仮想通貨市場にも影響を及ぼすことが多い
ハードフォークとは、仕様変更によって仮想通貨の基盤であるブロックチェーンが、旧仕様のものと新仕様のものに永久に分岐することをいう。
また、旧仕様のブロックチェーンも存続した場合、新旧の両者には互換性がないため、どちらかで新たな仮想通貨が生まれる。
これまでハードフォークによって数多くの新しい通貨が生まれ、それらの中には高い知名度と需要を誇るものも多く存在する。
この記事をとおして興味を持った方は、ハードフォークによって生まれたさまざまな通貨への投資を検討してみてはいかがだろうか。
なお、今回おすすめとして取り上げた3つの通貨のうち、ビットコインキャッシュとイーサリアムクラシックはDMM Bitcoinで取引することができる。
まだ口座をお持ちでない方は、ぜひこの機会にDMM Bitcoinのこともチェックしてみてほしい。