ハイブリッド化の進展から設置基準の見直しを

 世界を見渡せば、米国のミネルバ大学のように、自前のキャンパスではなく、世界中で授業を受け、学ぶ機会を設定しているような大学もあります。大学のカタチが大きく変容していくことがあり得るわけです。

 ラーニングアウトカム、つまり学習の成果が単位認定の要件となる修得主義がより強まることが考えられます。動画での授業なら、2倍速で見れば、授業時間は半分にできるかもしれません。単位認定における時間の意味が変わります。

 2014年3月に、東京工業大学で「国際教育シンポジウム」が開催されました。そこに招かれたMIT(マサチューセッツ工科大学)のエリック・グリムソン副総長は、講演の中で「もう講堂は要らない。知識の伝達はビデオ動画でやればいい。必要なのは小さなラボで、そこで議論することが重要なのだ」と語りました。

 Zoomなどを活用したオンライン授業では、大人数の講義から教室移動することもなく、瞬時にブレイクアウトルームに移動して、小人数での議論を行うことが可能です。まさにグレムソン副総長が示唆したことを実現できる環境が現在は整っているのです。

 このようにオンライン授業にはメリットもあります。こうしたシステムを活用すれば、学生数に合わせた教室の面積といった物理的な規制は意味をなくします。そのことは、さらに大学の定員の見直しにまで発展して、大学の経営そのものを大きく変えることになります。 

 本来的に規制官庁である文科省は、こうした動きが広がることを受けて、自らの役割を大きく捉え直す必要が出てくるかもしれません。授業のハイブリッド化は、教育機関の姿をこれから大きく変えていくことでしょう。

 今回の調査はどんな意味を持つのか、先述した再調査結果の公表とともにその意図を示してもらいたいところです。そして、この調査を設置基準の見直しにまで活用してもらいたいところです。