優劣よりもハイブリッド化を

 私はいまから32年前に、当時勤務していた河合塾で、通信衛星(CS)を利用した予備校授業の動画配信に関与したことがあります。当時はまだ、CSの使用料が高かったこともあるのですが、教室での対面授業と動画配信による授業の料金は同一に設定しました。授業の質を見た場合、動画配信の授業を安くする必要はないという判断からです。

 実際、対面とオンラインの双方には、それぞれの良さがあります。この2つを組み合わせた授業が効果的だともいわれるようになっています。対面とオンライン、その優劣を比べるのではなく、両者を融合させた授業のハイブリッド化が教育の現場では主流となっていくことでしょう。

 すでに私立中高一貫校の中では、単純に2019年までのような授業のあり方に戻ることはないという認識が広がりつつあります。 

 ハイブリッド化した大学で、もしオンライン授業の比率が高まった状態が続くと、学校行政にとっては不都合な事態を招きかねないことにも注意が必要です。それは、大学設置基準の問題です。 

 大学を設立する際、その用地は自前のものであり、学生1人当たりの施設面積や施設の内容など、さまざまな物理的な規制が設置基準にはあります。その背景には、対面授業を展開する際に最低限備えておきたいことが前提としてあるのですが、もし、オンラインによる授業が大きな割合となっていくと、設置基準を満たすことが教育の質を担保することと直接関係がないのではないかという疑問が出てくるからです。