志願者数トップは後期試験のある千葉大
新型コロナウイルス禍への対応により大きく志願者を減らした国立大学が出ている。概ね減少傾向にあるとはいうものの、中には1000人以上志願者を増やした大学もあった。何が明暗を分けたのか。まずは国公立大学の志願者数ランキングから見ていこう。
安田 国公立大学の2021年度入試志願者数は前年比▲3.2%の42万5415人で、▲12%と大幅減だった私立大学と比べると、その減少幅は全然たいしたことはありません。コロナ禍での経済的問題から国公立大人気が高まったことと、地元志向が高まり、国公立大しかない地域もありますから、志願者減がそれほどでもなかったのでしょう。
志願者数の多い順に挙げていくと、1位千葉大(1万1565人)、2位神戸大(1万2236人)、3位東京大(9089人)、4位北海道大(8621人)、5位大阪府立大(8057人)となりました。私立大は10万人超えが2大学のみになりましたが、国公立大の1万人超えもやはり2大学しかありません。
後藤 1位千葉大は2020年度に続きトップで、今年は1353人も志願者数を増やしています。他に増やした大学を見ると、+1045人の11位山口大(6633人)、+921人の2位神戸大、+702人の12位兵庫県立大、+652人の15位茨城大(6213人)、+388人の7位九州大(7629人)が挙げられます。
安田 最近顕著な傾向ですが、全般的に安全志向、地元志向が続いており、新型コロナ禍でそれが強まった感もあります。旧帝大でも、地元志向が高かった19位東北大(5750人)と30位名古屋大(4635人)で、わずかとはいえ志願者が増えたこともその裏付けといえるでしょう。
九州全域からの受験者がもともと多い九州大も増加しましたが、それでも福岡の受験生が安全志向で隣県の山口大に流れた様子もうかがえます。他に志願者が増えた大学としては、三重大や宮崎大が挙げられます。
後藤 とはいえ、九州にある国立大は、九州大と各大学の医学部を除けば、全般的にグダグダになっていますからねえ。佐賀大や宮崎大よりも立命館アジア太平洋大(APU)に行きますよ。APUのほうが学ぶことが多いですから。就職もいい。海外の若者と日常的に交流ができるし、仲間ができる。それだけでもうグローバルですよ。その過程で英語でのコミュニケーションも抵抗がなくなる。地域(大分県や別府市)との連携もしっかりとやっていて、社会貢献ができたり起業する機会があったり。
APUの志願者は地方に比べて選択の幅が広い首都圏から近年急増しており、首都圏の志願者比率が増えています。今や地元九州からは受かりにくくなっている状態です。九州の国立大学にはAPUは脅威ですね。受験生がなぜ国立大学よりもAPUを選ぶかは、今大学が何を求められているかへの対応の可否が如実に表れた結果でしょう。
APUのような大学が地方の各地域にできたら、九州に限らず、全国で起こりうることです。そうなっときには、国立大学は学費が安いだけの大学になるでしょうね。このご時世ですから、学費が安いことは大きな魅力ですが、多感で吸収力もある若者の4年間を考えると、どうなんでしょう。
以前の連載で、国公立大の2次試験(個別学力検査)の直前に、大学入学共通テストの成績で合否判定をするとした3つの国立大学について取り上げたことがあります。その結果はどうだったのか。新型コロナ禍と大学入試の問題を端的に示すこの事例についても触れてみましょう。
安田 2021年度の国公立大入試で一番志願者数が減少したのはその中の一つ、横浜国立大でした。志願者数合計は7581人から4189人へ、▲44.7%とほぼ半減しています。2次試験をやめて共通テストだけで合否判定したことが完全に裏目に出ました。