大学の募集定員をどう考えたら良いのか
安田 私の周りでも定年退職後、大学院に行く人がたくさんいます。これまで大学経営は18歳人口に頼りきりでした。一時期、社会人を取り込もうとしましたが、現実には働きながら学ぶことは困難です。今ならリモート(遠隔)で授業を受けられますから、社会人が大学での教育を受けやすい環境ではあるのでしょうけれども。
後藤 大学がこのまま高齢者と高校新卒者のものになっていくことを改めないといけません。
現役の社会人の人たちが、自分たちのウェルビーイングのために、新しい知識を学び続けていくことや古い知識を再構成することが大切です。アメリカではマイクロマスターといって、修士課程の2年間を4分割して半年ごと学んでいく制度もできています。そうやって学ばないと世界的な競争に勝てず、これからも増えていく高齢者を社会が抱えきれなくなる。
安田 一方で、少子化がこれからの大学入試に大きく影響を与えていくことは間違いありません。
後藤 今年から3年連続で18歳人口が減少します。その減り方も激しくて、2万人、2万人、4万人と減りますから、21年と24年を比べると8万人も少ないわけです。その分、大学入試は易化します。浪人すれば、より上位の大学に進学しやすくなる(笑)。
安田 22年も今年よりは18歳人口が減って入りやすくなる。21年は定員の厳格化で大胆に合格者を発表できず、定員を超えないように少しずつ合格者を繰り上げていったから、繰り上げ合格が大量に発生して大変でした。
後藤 定員の1.1倍を超えると助成金がもらえなくなります。一方で、オンライン講座で1人の教員が3000人に授業をしている、というのでネットでは炎上しましたが、教育の質的な保障という意味での「教室定員」は、リモート授業では不要になります。
大学設置基準や私学助成金の要件は、この際、部分的に撤廃すればいい。そして、募集定員を自由化することです。マスへの対応のみであれば教育の質はおのずと下がります。その評価が受験市場に反映されるでしょうから、大学もおいそれと入学者を過剰に受け入れられない。少子化で、大学は教育の質を向上させるよう不断の努力をしなければ経営が立ち行かないですから、過剰な入学者の受け入れには一定の歯止めがかかるでしょう。
安田 厚生労働省関係の医学部などは、実習など教育上の制約要因や全体の医師数を管理せざるを得ないので、これからも入学定員は残ると思います。
後藤 それが法学部や経済学部など、社会科学系の学部にも必要なのか、ということです。定員の自由化も一律にやろうとするからいけないのであって、分野別に行えばいい。