理屈に違和感を覚えたら、言語化し丁寧に伝える
こうした意見が出るのは、生徒さんたちが感覚的に「Yさんの意見はおかしい」と感じている、ということです。そして、どうにかして「Yさんは“中立”」という見方を否定するロジックがないかと、懸命に検討する姿勢を見せてくれます。
“中立”は、大人の世界でも都合良く曖昧に使われがちなマジックワードです。それだけに、子どもたちには、“中立”であるという“理屈”に違和感を覚えたら、それをきちんと言語化する強さを身につけてほしいと思うのです。
自分が思う“正しさ”や“信念”を貫くには、意志の強さが必要です。それは、一方的に相手を論破する力ではありません。自分の意見の根拠を根気よく“積み上げる力”です。でも、悲しいことに、議論をする過程では、時として“否定”や“破壊”の理屈の方が強い力を発揮することがあるのです。
実際、この事例に関しても、「Yさんの意見は間違っていないと思います。だって、何もしていませんよね?」「『おせっかい』は単なる自己満足だと思います」「わざわざ手間暇掛けて、他人のもめごとに首をつっこまなければならない理由は何ですか? そういう義務ってありますか?」といった意見も出ます。そして、これらを「絶対に間違っている!」などと断言し得る理由はありません。
それでも、「Yさんの意見はおかしい」と思うのであれば、相手を尊重しながら対話を重ね、自分の意見を理解してもらえるよう、丁寧に説明していくしかありません。その気力を保ち続けることこそが「強さ」なのです。いじめ予防授業を、自分の考えを丁寧に言語化する機会の一つにしてもらいたいと思います。