団塊ジュニアにはよく機能した合否判定
厳密に言えば、各回の母集団の構成が異なり、平均点も偏差値も異なる個々の模試を同じようには扱えない。だから、それらを総合してレイティングするランキングは、「実態ランク」と言ったところで、イメージでしかない。実際の一般選抜入試の問題は大学個々で異なる。異なる試験に対して推測するのだから、合否判定とは、実は何となく当たっている判定に過ぎず、極論すれば、模試による合格可能性判定は占いとさして変わらないのである。
しかし、受験人口も多かった団塊ジュニア世代が大学入試に挑んだ1992年前後には、それが実によく当たった。大学進学志望者の模試受験率が偏りなく高く、模試の問題が標準的な学力を幅広い層で測るものとしてよくできていたこともあり、受験生の学力データを把握しやすかったからである。
それに加えて、大学入試が難化していたため、ある一定の学力よりも上の層だけを対象に有意差を生むような出題ができたこと、受験率が高く、実際の状況に近似であり、かつ、平均点を60点にする正規分布が描きやすい出題ができたことなどなど、競争試験としての模試が機能しやすい環境にあったことは、合格可能性判定をするには優位に働いた。加えて、前回の連載記事でも指摘したことだが、当時の出題者の熟練度は高く、選択肢を少し直すだけで平均点を操作できた。
ただし、特定の大学の入試問題を模したもの以外の一般的な模試は、個々の大学の出題に対応しているわけではないことを理解しておかねばならない。標準的ではない、偏りのある出題、例えば特定の単元に偏った個別試験には、一般的な模試では対応できないのである。
これから大学受験に向かうお子さんの保護者に、大学入試難易度ランキングの決め方を簡単に解説しておきたい。ここでは河合塾の手法を紹介する。
模試では、志望大学の学部・学科など、募集単位ごとに合格可能性判定を行っている。大学入試ランキングは2.5ピッチの「偏差値帯」で募集単位ごとに示される。大学の募集単位のランキングが「50.0~52.4」といった「偏差値帯」であれば、模試の成績がこの偏差値帯(例えば偏差値51.5)にあれば「C」判定としている。
その一つ上の偏差値帯(52.5~54.9)であれば「B」判定。さらにそれよりも上の偏差値帯に成績が位置すれば「A」判定となる。逆に、大学のランキングの偏差値帯よりも一つ下であれば「D」判定、それよりも下であれば「E」判定となる。