「学長と副学長」辞任後の展望は開けたのか
――11月15日の理事会で、学長と副学長に辞任勧告が出された日本大。2024年1月9日から学長候補者立候補の受け付けが始まります。副学長の方は1月1日から3月31日まで、23年度内は歯学部の特任教授が就くようです。
後藤 新学長の在任期間は前任者の残り、24年4月1日から26年6月30日までとなります。22年7月に発足した林真理子理事長体制が、後述するアメリカンフットボール部の薬物問題により、わずか1年ほどでそのガバナンス不足を露呈、世間的に追い詰められています。
ヤメ検の弁護士として期待された役割を果たせなかった澤田康広副学長がクビになるのは仕方ないでしょう。酒井健夫学長は田中英壽元理事長(2008~21年)の下で総長を務めた経験(2008~11年)があるものの、第三者委員会から、林理事長とともに「ガバナンスが全く機能しなかった」と切り捨てられました。
井沢 24年も日大はガバナンスを問われることは間違いないと思います。今回、記者会見の質疑で学生新聞(日本大学新聞)の学生が切実な声を発したことが報じられ、そこまで苦しんでいるのかと思いました。今回のガバナンス問題が学生の就職に影響するとは思えないのですが、親や受験生もやはり心配します。
後藤 学長を募集するのではなく、林理事長が兼務する総長パターンでガバナンスを利かせて、その間に学長ではなく新しい理事長を探すのがベストだと思うのだけれど。まず学則を変更して、日大の教授あるいは経験者でなくても学長になれるようにして、外の血を入れることですね。その手始めに林理事長が教授経験なしでも学長になる。林理事長は有識者として十分に学長が務まると思うんです。大組織の運営経験がないのだから、課題が多岐にわたる理事長よりも課題が絞られる学長が適任だと思います。
――22年3月、前理事長の時に出された「日本大学再生会議」答申書に沿って、2年前に36人いた理事が現在は22人に、評議員は125人から47人へと大きく削減され、選出母体からの過度の影響を免れるよう、理事の定年制や再任を1回に限る外部人材で理事や評議員の3分の1以上を占めるようにといったガバナンス改革は形にはなってきています。
後藤 前の理事長が組織をつぶしてしまったから、組織の膿(うみ)はまだ残っている。正常な状態に戻す前に、今回の不祥事が起きてしまった。立命館アジア太平洋大学の学長公募では、大学に魅力があったから出口治明さんのような経営者が他薦で就任してくれたけれども、いまの日大で火中の栗を拾う人はいるのだろうか。
井沢 これだけ確固とした組織のガバナンスが崩れて、学校経営の経験が浅い林さんがどこまでできるのでしょう。こういうときこそ、文部科学省が人を出せばいいのにと思います。
後藤 基本的に経営は素人で、林理事長はスナックのママみたいなもの。林さんはむしろ学長にして、代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい。でも、日本最大の私立大学であり、組織もでかすぎる。文科省関係者にはやれる人がいないかもしれない。
――元文科省高等教育局長が評議員にいることはいます(笑)。
後藤 現理事会だと、和田秀樹専務理事は教育に強い関心があるが、大組織を動かしたことがない。第三者委員会答申検討会議議長として12月4日の会見に出てきた久保利英明弁護士は、総会屋対策で活躍した経験もある一流の企業弁護士です。久保利弁護士のような組織をよく知る人が担ってもらえるなら悪い話ではないかもしれない。理事長は、組織を知っている人、大企業の取締役経験者でないとできないと思う。
――政治家には適任者はいませんか。
後藤 一応、OBということであれば古賀誠と小沢一郎がいます。彼らならビシッとやるでしょう。その後のことは知らないけど(笑)。