
突如舞い込んだ試験期日の「遵守依頼」
2月、現在大学では2025年度の一般選抜が実施されている。まさに入試本番のこの季節、受験生や保護者でなくとも、メディアなどを通じてある種の緊張感が伝わってくる。
大学入試改革により、21年度からAO入試(アドミッションズ・オフィス入試)が「総合型選抜」に、推薦入試が「学校推薦型選抜」に、一般入試が「一般選抜」に再編された。こうした大学入試の方法や実施時期については、文部科学省が毎年6月に都道府県の教育長・知事、および国公私立大学長など宛てに「大学入学者選抜実施要項」を送付し、その周知を促している。
25年度入試の実施要項公表からおよそ半年後の24年12月24日、同省は、全国の国公立私立大学長宛てにさらに1通の文書を送付した。文書名は「大学入学者選抜実施要項において定める試験期日等の遵守について(依頼)」である。かいつまんで言えば、実施要項は「個別学力検査」(入試科目の学力テスト)を2月1日から3月25日までに行うとしており、この期日を遵守してほしいという依頼だ。
年の瀬も押し迫る、しかも、共通テスト直前の時期に送付された「依頼」。同文書には、2月1日以前に実施する総合型選抜や学校推薦型選抜において、「個別学力検査」を実施している大学が散見されるという指摘があると、その発信理由が記されている。
これに関して、大東文化大学が24年11月に、東洋大学が12月に実施した基礎学力テストのみで合否が決まる公募制の学校推薦入試が議論の対象となった。とりわけ東洋大学は、全入試合わせて10万人の志願者を集めるだけに、この規模の大学が首都圏で初めて、「英語と国語」または「英語と数学」の基礎学力テスト(英語は外部試験利用も可)のみで合否が決まる公募型推薦入試を実施したインパクトは相当なものだった。
ふたを開けてみれば、東洋大学の「学校推薦入試 基礎学力テスト型」には約2万人が出願。募集定員は578人だから、募集定員に対する競争率は単純計算で35倍という結果となった。少子化で学生募集に苦労する大学も多い中、次年度からはこれに追随しようと、同じタイプの入試の導入を検討し始めた大学も現れている。