関西では40年を経て定着した受験スタイル
一方で、関西圏ではすでに同様の入試を行っている私立大学は決して珍しくない。年内に京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学などの中堅大学やさらに下位の大学を基礎学力テスト型の推薦入試で受験し、年明けに関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学といった上位大学の一般選抜にチャレンジするというスタイルが定着している。
関西地区の大学関係者によると、こうした学力テストを行う推薦入試が生まれたのは1980年代だという。文部科学省の「依頼」通知に、この推薦入試を導入している各大学は今さら感を拭えなかっただろう。
先に述べたように、首都圏では、東洋大学のような大規模大学が基礎学力テスト型の学校推薦入試を導入したのは今回が初めてのこと。実は、入試実施前の24年10月、文部科学省は東洋大学と大東文化大学双方の学長に対して、次年度以降の入試について「個別学力検査」の期日を守るよう「指導」を行っている。これらの大学は「実施要項に違反している」というわけだ。
これに対し、東洋大学は「違反ではない」としている。「あくまでも『基礎学力』を測るテストであり、一般選抜、つまり個別学力検査とは別物と考える」と語るのは、東洋大学入試部部長の加藤建二氏だ。
「今回導入したのは、受験生が東洋大学で学ぶために必要な最低限の基礎学力を備えているのか否かを評価する入試です。しかし、文部科学省は、問題の難度や出題範囲を問わず、2月まで学力検査を実施してはいけないという方針のようです」(同氏)
実施要項は、学校推薦選抜において、小論文、プレゼンテーション、口頭試問、美術や音楽、スポーツなどの実技に関しては、高校教育や受験生への負担に配慮した上で2月1日以前でも実施を可能とする。一方で「個別学力検査」の科目や内容は各大学が定めることとしており、高校の学習での「基礎学力」を見るテストであれば高校教育に影響しないのでは、という見方もある。
「高校の授業の進度に配慮し、学力テストを早期に行うのは避けるべきとのことですが、小論文試験や実技試験を早期に行うのも同じではないでしょうか。総合型選抜などの年内入試を受験し、基礎学力が不十分なまま大学に入学してしまう学生も多く、そこに問題を感じて導入したのが、今回の基礎学力テスト型の学校推薦入試です」と、加藤氏は述べる。