2月中に納まりきらない私立大学の入試

 今回の基礎学力テスト型の推薦選抜に関する一連の動きに際して、長年続く関西圏の大学入試スケジュールはどうなるのか、あるいは、一般選抜の個別学力検査を2月1日以前に実施している私立大学はどうなのか……といった、不安や不満の声が大学や高校などから噴出することとなった。

 元駿台進学情報事業部長で教育ジャーナリストの石原賢一氏は、文部科学省の不備を指摘する。

「試験期日遵守を求める文書を出したことで、文部科学省は引っ込みがつかなくなりました。しかし、『ルール違反』というなら、これを長い間放置してきた文部科学省に問題があるのは明らかです。是正のチャンスは過去にもありました」

 後述するように、2月1日以前に一般選抜で個別学力検査を行う「フライング入試」の実施大学は相当数に上る。「そもそも国公立大学の入試日程を2月下旬に設定しておいて、2月中に私立大学の入試をやりなさいといっても、あまたある私立大学の入試が2月に納まるわけがありません。入試の実態を知らない人が決めていると言わざるを得ないのではないでしょうか」(同氏)

「大学入学者選抜実施要項」を決めるのは、国公私立大学や高等学校の代表者などをメンバーとする「大学入学者選抜協議会」だ。

 豊島継男事務所の調べによると、学力検査だけで合否が決まる公募制推薦入試を実施している大学は、全国で217校。また、2月1日以前に一般選抜を実施している私立大学は、210校に上る(いずれも24年度)。これらを一斉に「是正」する手段は存在するのか。疑問を抱く声は少なくない。

「入試制度が変わるとき、最も翻弄されるのが他でもない、その変わり目に入試を受ける受験生です」と、石原氏は述べる。

 センター試験に代わって、初の共通テストが行われたのは21年のこと。導入予定だった国語や数学の記述式問題、英語の4技能試験が、実施半年前に突然見送りとなり、受験生が振り回される格好となったことは記憶に新しい。受験生に混乱を招かないことが、文部科学省、そして大学の務めであるのは言うまでもない。