入学金返還で志願者数も入学歩留まりも上がった!

 一方、文部科学省の求めに応じ、入学金負担軽減の実施に踏み切る大学もある。桃山学院大学、美作大学、新潟工科大学、文化学園大学の4大学は今年7~8月にかけて、入学金取り扱い制度の変更・新設を発表した。対象となる入試の種類や返還割合などに違いはあるものの、いずれも入学金の二重払いを回避する仕組みとなっている(3ページ図表参照)。

 大学入試や塾に詳しい識者は「2026年以降、入学者の歩留まりを上げたい地方の私立大学などから入学金二重払い回避の動きが広まり、その後、首都圏や関西圏の大学にも徐々に波及するのではないか」と見通しを語る。

 今回の文部科学省通知とは関係なく、独自に入学辞退者への入学金返還制度を設けているのが産業能率大学だ。同大学は、最高裁判所が入学金には返還義務がないと判断した2006年以前から、入学辞退者には入学金の全額返還を行っている。受験生と保護者に向けた「入学金二重払い」の問題点を指摘する情報発信にも積極的だ(※2)。

「マネジメント研究を標ぼうする本学は、創立者・上野陽一の『ムリ、ムダ、ムラを廃する“3ム主義”』の精神にのっとり、入学辞退者の二重払い(=ムリ、ムダ)回避のために入学金の返還を実施してきました」(産業能率大学入試企画部部長・林巧樹氏)

 同氏によれば、返還の際に辞退者の進学先を聞くことで、自大学のポジショニングが明確になり、入試施策や広報戦略の貴重なデータとなった。また、入学率も減少することなく、むしろ向上したという。

 文部科学省が2023年に全国600の私立大学を調査した結果、入学金の平均額は24万806円(21年比2万1000円減)、これに授業料、施設設備費、実験実習料、その他を加えた初年度納付金の平均額は147万7339円(同4000円減)だった(※3)。

 受験時には私立大学で1学部3万5000円程度の受験料が必要(多くの大学は、複数学部受験などで割引あり)で、塾や予備校の受験直後講習費なども勘案すると、受験から入学までに要する保護者の経済的負担は相当額に上る。入学金の二重払いが回避できる意味は大きい。

 今後、図表に挙げた大学以外にも、入学金負担軽減措置を実施する大学が出る可能性もある。保護者も子どもの志望校のホームページをこまめに確認するよう心掛けておきたい。

※2「動画でわかる!お金の話」(産業能率大学)
※3「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」(文部科学省)