顕在化してきた受験校数絞り込みの動き

 ここからは11月模試結果に基づき見ていこう。併せて以前ご紹介した10月模試の男子女子、9月模試の人気校穴場校についても比較しながらご覧いただくと流れが分かるかもしれない。

 1月10日の栄東(1回A)は、男子▲20%、女子▲30%強と大きく志願者が減っており、このまま推移すれば予想倍率が男子1.2倍、女子1.1倍とほとんど合格を得られる入試になる可能性が高まっている。東京・神奈川の受験生にとってはお試し受験により合格体験を得ることは、モチベーションを高める上で重要といえる。その意味で大切な入試なのだが、出願初日の12月1日の出願数が前年より10%ほど多かったという話を得た。

 このことをどう考えたらいいのだろうか。一つは、同じ栄東でも東大特待のような受験生のレベルの高い入試は避けるという傾向が考えられる。もう一つは、受験校を2021年入試では全般的に絞り込むのではないか、という傾向が感じられる。首都圏の中学受験の場合、平均すると6校強の出願をする。これが今年は5校台へと1校分ほど減少するのではないかと、塾関係者の間ではささやかれているのだ。

 コロナ感染リスクの防止という観点もあるが、2020年に一大ブームとなった2月1日午後入試への志願者数が、10月模試の分析でも触れたように減少傾向にある点が挙げられる。2日午後入試もそうだが、早くに合格を勝ち得たい受験生にとって、こうした午後入試は午前の入試よりも受かりやすい点にメリットがあった。

 ところが、難関校受験生が併願するような午後入試では倍率が高くなる一方、その学校の普段の入試よりも偏差値が数ポイント上昇する傾向も見られた。つまり、合格が得にくい。そんなこともあって、先述した出願校数の減少の対象となるのが、1日や2日の午後入試になる可能性が考えられる。

 コロナの影響ではもう一点、帰国生入試の変化にも触れておきたい。欧米での感染拡大に伴い、駐在員の帰国が増えている。受験生も早めに戻る傾向にあり、そのことが中学受験にも影響を与えるかもしれない。

 2021年開校の目玉である広尾学園小石川では、11月に行われた国際生入試に260人強の受験生が集まったことで話題となった。同校の場合は一般的な帰国生に加えて、国内のインターナショナルスクールなどに通っていた生徒も対象に含めた国際生という呼称で入試を行っているのだが、一般に成績優秀な生徒が多いといわれる帰国生が、一般入試にも参入してくる動きがみられるかもしれない。