半導体大手のインテルにとって、2016年は大きな転換を迎える1年になりそうだ。今年4月に発表した新たな事業方針では、これまでのPCを主軸とした事業体制から、データセンターおよびIoTなどの分野へとシフトする姿勢を明確に打ち出す一方、従業員の11%に相当する1万2000人を削減することも発表した。増収を続けるインテルが、このタイミングで大規模な人員削減に乗り出すことも注目されている。一方、インテル日本法人は、2016年4月に、設立40周年という節目を迎えたところだ。インテルの江田麻季子代表取締役社長に、これまでのインテル、そしてこれからのインテルについて聞いた。

PC中心の体制から
IoTなど複数事業の並立へ

インテルはIoT時代にどう変わろうとしているのか江田麻季子・インテル株式会社代表取締役社長/インテル コーポレーション セールス&マーケティング統括本部 副社長Photo:DIAMOND IT & Business

――2016年4月、インテルは、PCを中心とした事業体制から、データセンターやIoTに軸足を置いた事業体制へとシフトする方針を打ち出しました。この狙いはなんですか?

江田 1968年に設立したインテルは、当初は、メモリ事業でスタートし、PCの広がりとともにCPUを中心として成長を遂げてきた経緯があります。時代の変化とともに事業体制を大きく変えてきた経験があるわけです。

 インテルは、数年前から、クラウド、IoT、データセンターといった領域にフォーカスし、事業展開を進めています。PCだけではなく、タブレット、スマホに加えて、IoTやウェアラブルという大きく広がる世界が生まれ、さらにPCやIoTの先には、データセンターやクラウドがあり、そこに大きなサービスが創出され、ネットワークもより大きく広がることで、社会にとって好循環ともいえるサイクルが生まれるようになります。

 2016年4月の発表は、そうした新たな市場環境のなかで、インテルはビジネスを成長させていくことを、明確に宣言したものだと受け取ってもらっていいと思います。とくに、日本では、IoT領域などにおいての先進性がありますから、いち早く、このシフトに乗り出していました。

 2016年4月の発表は、それをグローバル規模で展開していくことを示したものになります。ただ、インテルにとっては、すでに事業としてやっているものであり、製品群も揃っていますし、新たな事業部を作るわけでもありません。そして、注目していただきたいのは、現時点では、PCが売上高の6割を占め、IoTは約1割、サーバーやデータセンターでは約3割に留まっていますが、すでに利益の65%をPC以外の事業が占めているということです。これは、PC向けに開発し、蓄積した知的財産を、データセンター、IoT、ネットワークといった分野において活用しているという背景もあります。

 このように、インテルが蓄積した技術を新たな分野に投資していく姿勢はこれからも変わりません。そして、ムーアの法則による進化はこれからも継続していきます。これも、新たな市場でのビジネスに大きな影響を与えます。2016年はインテルにとって、大きな節目の1年になるのは確かですが、これは、転換というよりも、インテルの立ち位置を、業界および顧客に対して明確にしたという表現が最適かと思います。