今週行なわれた事業“再”仕分けについて、それを行なうこと自体まったく意味がないことは先週説明しましたが、その場での議論をフォローしてみると、改めて事業仕分けというアプローチの限界が見えてきます。ここでは、電子書籍に関する議論を題材に、その点について考えてみたいと思います。

電子書籍普及のボトルネック

 今年は電子書籍がすごいブームですが、電子書籍を普及させるに当たっては様々な課題が存在します。その一つが、ファイルフォーマットの問題です。

 ファイルフォーマットとは、平たく言えば電子書籍のデータのフォーマットのことです。電子書籍の中身はデジタルデータですが、そのデータをどのように扱うか、どのアプリケーションで再生できるかを定めた規約を意味します。

 たとえば、ワープロのファイルフォーマットはMSワードと一太郎では異なり、一太郎のファイルはMSワードでは開けません。それと同じで、電子書籍のファイルフォーマットに応じて、それを閲覧できるビューアー(ウェブ・ブラウザや電子書籍端末)が限定されるのです。

 そして、現状では電子書籍についても様々なファイルフォーマットが乱立しています。ファイルフォーマットが乱立するのを放置したら、電子書籍端末の間で互換性がない、出版社は複数のファイルフォーマットのコンテンツを用意しないといけないなど、様々な不都合が生じるのです(ちなみに、英語と異なり日本語の場合は外字などの多様な漢字表記が存在するので、海外でよく使われているファイルフォーマットは必ずしも日本語の電子書籍にふさわしくないという問題もあります)。

 つまり、電子書店の数も増え、電子書籍端末のバリエーションもこれから充実しようとしていますが、このままでは電子書店によってファイルフォーマットが異なる、ファイルフォーマットによって閲覧できるビューアーや端末が限定される、という不自由な市場になりかねないのです。

 加えて、米国の電子書籍市場では、アップルとアマゾンが電子書籍端末と電子書店の双方を統合した垂直統合型ビジネスモデルで圧倒的シェアを持っています。しかし、日本では、アップルはiPadを発売したものの電子書店は開設していません。アマゾンに至っては端末と電子書店の双方について未進出です。