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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

所得が増えても消費が増えない理由は「年金不安」の根拠

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]
【第217回】 2016年9月21日
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勤労者世帯の給与所得はプラス
消費が同調して増えないのはなぜ?

2014年春以来、消費の低迷がずっと続いている

 2014年春以来、消費の低迷がずっと続いている。消費税率引き上げが行われた後、趨勢的な実質消費の伸び率は0%の推移である。この間、勤労者世帯の給与所得はプラスの伸びになっている。

 どうして、家計所得が増えているのに、消費が同調して増えないのだろうか。

 消費支出が可処分所得に同調しない状況は、消費性向の上昇(貯蓄率の上昇)として表れる。総務省「家計調査」では、構成員2人以上の勤労者世帯の平均消費性向(季節調整値)を時系列で計算している(図表)。

◆平均消費性向

出所:総務省「家計調査」

 その値が、2016年6月69.4%、7月69.3%と連続して大きく切り下がった。2015年平均が73.7%だから、最近は4%ポイント以上も消費性向が低い。

 つまり、家計は4%以上も所得から貯蓄に回す割合を高めているのである。

 なお、消費性向が6~7月に69%台に下がったは、2006年7月以来のことである。単月ではなく、2ヵ月連続なので、偶然とも言いにくい状況である。では、家計はなぜ能動的に貯蓄を増やそうとしているのだろうか。

筆者が考える有力仮説は
老後と年金への不安

 通常、消費性向が大きく落込むのは大きな経済的ショックが起こったときである。より具体的に言えば、雇用不安に見舞われて、自分の仕事を喪失する可能性を意識したときに、人は消費を手控える。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。


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