雨のサーキットを安心して全開走行でき
スーパーへの買い物にも違和感ないGT-R
9月中旬、日本の新型スーパースポーツカーを立て続けに乗った。
まずは、今年誕生9年目にして、大幅改良された日産「GT-R」だ。
メディア試乗会場となった、千葉県内房のゴルフコースのクラブハウスには、GT-Rのヒストリーを紹介するパネル展示があった。1969年2月に「ハコスカ(型式PGC10)」4ドアとして登場し、同2ドア(KPGC10)、そして「ケンメリ(ケンとメリー)」(KPGC110)へと続く、高経済成長期での第一次黄金期。時は流れて、バブル真っ只中の89年に「32(BNR32)」として復活し、「33(BCNR33)」、「34(BNR34)」と進化した、第二次黄金期。そして2007年、現行の「35(DBA-R35)」で再復活を遂げた。
筆者が「35」の開発実態を知ったのは、2000年代前半の米24時間耐久レース・デイトナ24時間だった。そこに、「35」の開発統括者の奇才・水野和俊氏がいた。日産の一員としてではなく、金沢のプライベートチームが持ち込んだフェラーリを「35のサスペンションの実験台にしている」と、手弁当での参戦だった。
その後、「35」開発プロジェクトに本格的なGOがかかり、水野氏と、ベテランレーサーで日産ワークスチームの立役者だった鈴木利男氏が二人三脚で「35」の熟成を続けた。その合間に、関係者内から漏れ聞こえてくる話を聞きながら、筆者は「35」の凄みを感じ取っていた。そして、2007年東京モーターショーに登場した「35」は、500馬力超の3.8リッターV6ツインターボを搭載する2ペダル式の四輪駆動車として、威風堂々と登場した。
その後の9年間、何度かの改良が加えられたが、その方向性は大きく2つある。ひとつは、「GT-R」の「GT(グランドツーリング)」の領域。高速道路やワインディングでの安定した走りのなかでの「走る愉しさの追求」。もうひとつが、「GT-R」の「R(レーシング)」で、サーキット走行での「ドライビングパフォーマンス」の向上だ。
筆者はこれまで、世界各国の様々なシチュエーションで「35」に乗ってきたが、今回の大幅改良で感じたのは「『普段使い』での安心感と、サーキット走行の扱い易さの高次元での融合」だった。
トランスミッションの静粛性と、1速から2速へのシフトのスムーズさ。車体の大幅補強による乗り味の柔軟性アップ。さらに、車体フロントの開口部の大型化による、見た目の迫力アップなどで、上質なプレミアムエディション、スポーティなトラックエディション、さらに空力性能も大幅改良を施したNISMOなど、全モデルでの「大幅な商品性アップ」を実感した。