富士重工業・新宿本社訪問の8日後、JR中央線・東小金井駅の北口から武蔵境駅方向へ線路沿いに徒歩約7分、宮崎駿監督作品で有名な「スタジオジブリ」まで直線距離100mほど手前、巨大なプレハブ構造のガイナックス本社屋での取材許可が出た。同社は来年早々、新社屋への移転を控えているという。

 出迎えてくれたのは、ガイナックス・アニメーション制作部・制作デスクの高橋祐一氏、同社インターネット事業部・部長の小倉由美子氏だ。高橋氏は、本連載の前回お伝えしたスバル(富士重工業)とガイナックスのコラボで提供するウェブアニメ「放課後のプレアデス」のプロデューサーであり、小倉氏は同作品のプロモーションを担当している。以下、両氏へのインタビューをお届けする。

「放課後のプレアデス」キャラクター5人。左から「ななこ」、「あおい」、「すばる」、「いつき」、「ひかる」。

筆者 「ガイナックスで過去に、クルマに関する作品を制作したことはありますか?」

高橋氏 「ストーリー展開上、パロディを含めて、クルマが出るアニメはありましたが、クルマにフィーチャーした作品はありません。ロボ(高橋氏はロボットをこう表現)はよく登場しましたが、クルマちっくなロボはあっても、クルマその物はありません」

筆者 「インターネット専用のアニメは、日本ではポピュラーなのですか?」

小倉氏 「全編がフラッシュ(動画やゲーム用の動画形式)のアニメはあります。それは個人が、動画作りが好きで自分で作ったものです。それを自分のサイト等で公開して、その人気に映画会社が目をつけて劇場公開するなどしています。ただ、個人として、または制作会社として利益を追求している傾向はありません。(こうしたトレンド以外には)インターネット専用のアニメはほとんどなく、ガイナックスでも過去に制作したことはありません」

 なお、自動車メーカーのアニメ以外のウエブ専用ドラマなどに関しては、トヨタ「iQ」がGyao専用ドラマ、ホンダ「インサイト」などのグリーンカープロモーションでウエブドラマがあった。また日産が「ハイジ」をデフォルメするなど、既存の漫画やアニメキャラクターを宣伝に使用することは当然ある。アメリカでは過去に、北米トヨタ、北米日産、北米三菱、GM、フォード・モーターなどが、実車とアニメを融合させたプロモーションを実施したことがある。

 だが、今回の「放課後のプレアデス」のように、自動車メーカーがオリジナルシナリオに基づくウェブアニメを自社サイトで流すことは世界初だ。それどころか、日本にはこれまで本格的な広告アニメはなかった。それはなぜか?