ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
トンデモ人事部が会社を壊す

社員のチャレンジの芽を摘む「リスク過敏症」企業の愚かさ

山口 博
【第54回】 2016年10月4日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

一般社員が新聞記事に載ることに
なぜかくも反対意見が噴出するのか?

新たな取り組みが検討され始めるや否や、「できない理由」を並べ立てて阻止する「リスク過敏症」企業。これではヤル気のある社員ほど、在籍し続けるのがバカらしくなる

 かつて人事部長として勤務した会社で、特に優秀な社員のビジネス活動を支援して、退社抑制を図るために、社員のエッジの効いた取り組みをメディアへパブリシティとして紹介しようとしたことがある。

 いわゆる広告出稿ではない。企業はメディアへ代金を払わずにトピックスを紹介し、メディアに取材や寄稿の形で掲載してもらう活動だ。

 取り上げるかどうかはメディアの判断なので、100%実現できるわけではない。また、取材であればなおさらそうだが、寄稿であっても編集権はメディアにある場合が多いので、企業が望んだどおりの記事になるとは限らないリスクはある。しかし、効果も大きいはずだ。この取り組みを提案したところ、以下のような反対意見が殺到した。

1.越権行為
そもそもパブリシティは広報部門の役割で、人事部門が行うことは越権行為だ。

2.広告かパブリシティか
どの部門が担当するにしても、パブリシティはリスクが大きすぎる。今まで通り広告を出していけばよいではないか。

3.社会的認知
どのようなトピックスを紹介するにせよ、それが社会的に認知され評価されていることは証明されていないので、メディアへ情報提供するべきではない。

4.一般社員「黒子論」
仮に、情報提供できるトピックスがあったとしても、取材対応や寄稿は、社長や役員に限るべきだ。従来から、一般社員が原稿を作成し、それに基づき、社長や役員の名前で取材対応や寄稿をしており、その方法を続けるべきだ。一般社員名で取材対応や寄稿をするなど、100年早い。

5.一般社員の社外流出リスク
もし、一般社員名がメディアへ露出されれば、その社員が優秀であればあるほど、ハンティングのリスクが高まり、社外流出しかねない。人事部長として、その責任が取れるのか。

6.パブリシティのリスク
一般社員が取材や寄稿をして、取引先から批判を受けたら、誰が責任を取るのか。リスクが大き過ぎる。どうしても出すならば、会社名は絶対出すべきではない。会社の預かり知らぬところで、例えば休日に執筆して、個人名で出す分には、会社はとやかく言わない。従って、原稿料が入るならば個人が受け取れば良い。また、取材や寄稿が増えても、広報部門のリソースは割けないので、会社名で出すべきではない。

7.売名行為
メディアにパブリシティすることは売名行為だ。そのような卑しいことに、当社は積極的に取り組むべきではない。

 留まるところを知らぬ反対意見に、私は困惑を通り越して、笑ってしまった。よくもまあ、これだけネガティブな意見が出るものだと感心もした。そして、これらの反論について、一つひとつ説明を試みた。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

山口 博

やまぐち・ひろし/慶應義塾大学法学部政治学科卒(サンパウロ大学法学部留学)、長野県上田市出身。国内大手保険会社課長、外資系金融保険会社トレーニング・シニア・マネジャー、外資系IT人材開発部長、外資系企業数社の人事部長、人事本部長歴任後、現在、コンサルティング会社のディレクター。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日本ナレッジ・マネジメント学会会員。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。

 


トンデモ人事部が会社を壊す

サラリーマンの会社人生のカギを握る人事部。しかし近年、人事部軽視の風潮が広まった結果、トンデモ人事部が続々と誕生している。あっと驚く事例をひもときながら、トンデモ人事部の特徴や、経営陣がすべき対処法などを探っていく。

「トンデモ人事部が会社を壊す」

⇒バックナンバー一覧