日本人4人目となるノーベル生理学・医学賞を東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏が受賞した。自分の細胞の不要なたんぱく質を分解してリサイクルする「オートファジー」のメカニズムの解明が受賞理由だ。10月3日夜、大隅氏が「週刊ダイヤモンド」のインタビューに応じ、受賞の喜びを語るとともに、日本の基礎研究軽視の風潮に警鐘を鳴らした。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)
――ノーベル賞受賞、おめでとうございます。研究のどんな点が評価されたと感じていますか。
オートファジーは、細胞に備えられた分解機構のメインの一つで、さまざまな生命現象に絡んでいることは間違いないものです。しかし、実際に何が起きているのか理解することは難しかった。そこに私は酵母を用いた研究手法を持ち込むことで、分子レベルでオートファジーを説明できる突破口を開きました。
研究を始めた当初、国際会議を主催して約50人の研究者を集めたのですが、本当の意味でオートファジーの研究に取り組んでいる研究者はごく少数でした。ところが、ある時期からオートファジーに関連する遺伝子を利用した研究が活発になり、ものすごい勢いで増えました。
東京大学の水島昇先生や、大阪大学の吉森保先生などの優れた研究が続いたことで、多数の研究者がこの分野に興味を持つようになったためです。多くの研究の積み重ねの上に今日があると実感していて、その契機となった、オートファジーにかかわるAtgという遺伝子群を特定したことが評価されたのではないかなと考えています。
とはいえ、正直に言って、受賞はまだ早いのではないかとも感じています。