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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

小学生に「人事評価」!?仰天通信簿に見る世界最先端教育

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第60回】 2016年10月12日
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企業の人事評価と酷似!
マレーシアの小学校の通信簿

 筆者の住むマレーシアの新学期は、その年の1月から始まるのが通常だが、インターナショナルスクールなどでは、独自の学校歴を採用しているため、学校によって新学期が異なることも多い。

学校からの一方的な評価を受けるのが当たり前。そんな日本の学校制度とは大きく違うのが、「国際バカロレアプログラム」。わずか小学校3年生にして、まるで企業の人事評価のような内容だ

 筆者の娘の通う小学校は、8月に新学期が始まる。今年小学3年になった娘が、1学期目の成績表(通信簿)を持ってきたが、それを見て驚いた。

 娘の学校が採用しているのは国際バカロレアプログラムである。これは1968年にスイスの非営利団体が打ち出したプログラムで、国際的な機関や外交官の子どもたちが、母国での大学進学に困らないよう、さまざまな国の大学制度に順応できるために開発されたものだ。それに加えて、世界の発展と平和に貢献できる人材を育成する「全人教育」を特徴としている。

 小学生のプログラムの特徴は、「よき学習者」となって、生涯学習を効果的に行える人材になるための基礎を育てる点にある。「よき学習者」になるためには、まず、次の5つの能力が必要とされる。

(1) 研究能力――疑問を持ち、観察し、計画を立て、データ収集を行い、データを書きとめ、データを整理し、データを解釈し、最後に研究結果を発表できるスキル
(2) 自己マネジメント能力――身体能力、運動スキル、空間把握能力、時間管理能力、安全で健康な生活を送る能力、行動規範、十分な情報に基づく選択ができるスキル
(3) コミュニケーション能力――リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング、文脈理解、プレゼンテーション、そして非言語コミュニケーションの能力
(4) 思考能力――知識を身に着け、総合的に理解し、応用し、分析し、統合し、評価する能力、および対話による思考能力(弁証法的思弁)と、メタ認知能力
(5) 社会性――他人と協力し、対立を克服し、他者を尊重し、責任感を持ち、集団意思決定を行え、さまざまなグループのルールを採用できるスキル

 見てわかる通り、ほとんど企業での人事評価かと思うような項目が並ぶ。もちろん企業の場合はもっと細かく、かつ厳密だが、これが小学校3年次から使われている点が一番重要だろう。

 そしてもうひとつ重要なのは、これらの点について「自分はどれだけ能力が身についたか」を自己評価する欄があり、それに対して先生がフィードバックを与える仕組みになっていることだ。そのためには、生徒自身がこの基準を理解する必要があり、日ごろから自分のパフォーマンスの良し悪しを意識して自己評価することが求められる。

 小学校3年生に、それを完璧にさせることはもちろん不可能だ。だが、この学校では、とにかく慣れさせることで、徐々にそれをできるようにさせる方針をとっている。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

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