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社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

好業績から一転谷底に転落
一見安全な高利回り金融商品が生んだ巨額損失!
某商社の判断はどこが間違っていたのか

小川真人 [ACEコンサルティング株式会社 代表],白井邦芳 [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]
【第16回】 2010年12月15日
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気づかないうちに
リスクの高い金融商品を購入

 H物産は、中国から仕入れた格安の製品を、国内の卸業者に販売する輸入業を営む商社である。長引く不況を背景として高額品の販売が伸び悩む中、中国から輸入する低価格品は、かえって売上を伸ばしていた。

 業績はここ数年間順調に伸び、その結果として潤沢な手元資金を確保していた。しかし、資金繰りには余裕ができたが、実質0パーセントに近い低金利が続く経済環境下、単純に銀行に預金しておいても大した利息も稼げない。

 一方で、同社は従来から日々の営業資金を調達するために、銀行から借入を行っていたが、銀行からの要請もあり、余裕資金があってもなかなか借入金の残高を減らすことができないでいた。その結果、毎年の支払利息は相当な額に達しており、資金運用益の確保は同社の重要課題であった。

 そんな折、財務部長のK氏は、証券会社から、円建てでありながら金利が3%以上となる高利回りの債券を紹介された。債券は5年後の一括償還で、信用格付けはAクラスに相当しており、統計的には貸し倒れのリスクは十分に低いものと判断された。

 証券会社の担当者の説明によれば、この金融商品は、高度な金融工学を利用して組成された優れ物で、倒産リスクを低く抑えながら、高利回りが確保できるように工夫されているという。

 どうやら、円ドルの為替レートが1ドル90円を超えて円高ドル安となると、元本の償還額が50%に減額されるとのことであったが、為替レートも1ドル120円程度で安定しており、90円という円高の到来は全く懸念されていなかった。倒産リスクが低いにもかかわらず高利回りであるというメリットに比較すれば、そのようなリスクは取るに足りないものであるように感じられた。

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小川真人(おがわまひと) [ACEコンサルティング株式会社 代表]

公認会計士、公認不正検査士、日本法科学技術学会正会員。慶応義塾大学商学部卒業後、1986年、ピートマーウィックミッチェル会計士事務所(現在のKPMGあずさ監査法人)に入所し、会計監査・リスクマネージメント業務に幅広く従事。2003年より2008年まで、(株)KPMG FASにて日本における不正調査サービスの責任者(パートナー)として、不正会計調査、経営者不正調査、従業員不正調査、個人情報流出事件調査など、多様な不正調査やリスクマネージメント業務を提供。2008年4月より、ACEコンサルティングを設立して独立。

白井邦芳(しらい くによし) [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]

AIU保険会社及びAIGグループ在籍時に数度の米国研修・滞在を経て、企業の危機・不祥事・再生に関するコンサルティングに多数関わる。2350事例にのぼる着手案件数は業界屈指。2009年から現職。リスクマネジメント協会評議員、日本法科学技術学会正会員、経営戦略研究所外部専門委員、著書に「ケーススタディ 企業の危機管理コンサルティング」(中央経済社)等がある。


社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

海外で発生するテロや暴動そして天災、果ては脅迫から社内の権力闘争の暴露まで。現代の企業はまさにリスク取り囲まれて活動している。ことは生命にかかわることが多いにもかかわらず、依然として、日本企業はこの種のリスクには鈍感。イザというときに、じたばたしないためには、準備こそがすべて。具体的な事例を基に危機管理の鉄則を公開する。

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