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元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

日韓で差別される在日韓国人は両国の架け橋になれるか

武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
【第11回】 2016年10月18日
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日韓関係が悪くなると
しわ寄せは在日韓国人にくる

 私は、2002年から05年までハワイの総領事をしていた。その時、ハワイ出身の故ダニエル・イノウエ上院議員に再三お目にかかる機会があった。同氏は2012年12月17日に88歳で亡くなったが、ロバート・バード上院議員が死去した後に上院で最古参の議員となり、上院仮議長に選出された(議長は副大統領)。同氏は日米関係の改善に貢献したことに対し、2011年に日本政府から桐花大綬章を贈られている。

 しかし同氏は、1980年代に日米間の貿易摩擦が政治問題化した際には、リチャード・ゲッパート下院議員などと共に、対日批判の急先鋒であった。

 そのイノウエ氏が日米関係の安定のために尽力するようになった経緯に関して、生前私に「若いころは日米関係に関与して来なかったが、日米貿易摩擦の際、日米関係が悪化すると、もっとも影響を被るのは在米の日系人であることを痛感した。それ以来、日米関係の安定のため尽力するようになった」と述べていた。

 2007年に中国や韓国が「慰安婦強制連行説」を主張して米議会で審議された時も、日本の首相と衆議院が謝罪を行ってきたとして、日本の立場を擁護している。同氏は晩年、自分がいなくなった時、上院で日米関係を擁護してくれるのは誰かとしきりに心配していた。

 日韓関係が悪くなると被害を受けるのは在日韓国人も同様である。いや、在米日本人以上だろう。

 日韓関係は、昨年末に慰安婦問題で合意して以降改善の方向にある。しかし、2012年8月に李明博大統領(当時)が竹島に上陸してから、朴槿恵大統領の前半を通じ、政治関係ばかりでなく、国民同士までギクシャクする雰囲気が続いた。その間は首脳会談も全く行われず、朴大統領は中国の習近平国家主席と声をあわせ日本の歴史問題への対応を非難し続けた。

 この間、日本では日韓関係は史上最悪との見方が広がり、嫌韓感情が高まった。私に、韓国について意見を述べる人は、ほぼ一様に「韓国は一体どうなっているのか」との疑問を投げるか、「韓国なんか放っておけ」と無視するかのどちらかであった。

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武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」、「韓国の大誤算」(いずれも悟空出版)。


元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

冷え込んだままの日韓関係。だが両国の国民は、互いの実像をよく知らないまま、悪感情を募らせているのが実態だ。今後どのような関係を築くにせよ、重要なのは冷静で客観的な視点である。韓国をよく知る筆者が、外交から政治、経済、社会まで、その内側を考察する。

「元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」」

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