Photo by Kazutoshi Sumitomo
「DIOジャパンという会社が勝ったのか! それは、いったいどんな会社なんだ」──。
20社以上が参加した、あるコールセンター業務の受注コンペ。並み居る大手を抑えて受注を勝ち取ったのは、小島のり子率いるDIOジャパンだった。競合たちが驚いたのも無理はない。DIOジャパンがコールセンター事業を始めたのは、たった3年前のことだからだ。
DIOジャパンのコールセンターはひと味違う。一般に電話応対するオペレーターは、受託した企業から与えられたマニュアルに従うだけだ。つまり、コールセンターとは電話代行業にほかならないが、DIOジャパンはそれにとどまらない。
「コンシェルジュを目指しています。そして、ユーザーとのやりとりを通じ、どのように対応すれば契約に結び付くか、日々受け答えの内容を見直し、マニュアルを改善しています」と小島は言う。
たとえばどういう改善か。宿泊予約サイトのコールセンター業務を例にとろう。インターネットサイトを見て宿泊予約をする際に、もっと詳しい情報やサイトの利用方法などを知りたいと思う人は多い。そこでコールセンターの出番となるが、ただ電話を受けるだけでは予約獲得に結び付くのはせいぜい2~3割でしかない。ところが、DIOジャパンの場合は、平均6割を超える成約率を誇る。これこそがマニュアル改善の結果だ。
宿泊施設の周辺情報や実際の部屋の眺望、英語が通じるのか、なかには宿泊施設の担当者ですら知らないような細かな内容まで調べ上げ、マニュアルを作り上げる。また、1ヵ月超にわたるオペレーター研修では、徹底した受け答えの訓練に加え、担当する宿泊施設に泊まり込んで施設を調べ上げる。そこまですれば、何を尋ねられても自信を持って答えられ、おのずと成約率はアップする。こうした“分析と研究”が小島の真骨頂であり、そのルーツは小島の特異な経歴に見て取れる。
亡き父の無念の思いを胸に起業を決意
じつは小島は知る人ぞ知る卓球界の有名人。中学時代には鹿児島県で1位、高校時代には全日本ジュニアで5位となる実力だ。そして、スカウトされて入社した大手紡績会社では、社会人ダブルスで日本一に輝いた。
その後、愛媛県のある企業に請われ、実業団の卓球部を一から立ち上げて監督に就任する。わずか23歳のときである。それから10年ほど監督を務め、卓球部を全国に通用するレベルにまで育て上げた。