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野口悠紀雄 人口減少の経済学

2001年以降に変化した国債消化構造の危うさ

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第10回】 2010年12月17日
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 「高齢化社会では資産の運用が重要な課題となるが、日本の場合には将来時点でインフレが発生する可能性が強いので、いかなる資産で運用するかが難しい課題になる」と前回述べた。

 インフレが予想される理由は、国債の発行が今後も際限なく増加し続けると予想されることだ。これまで述べてきたように、高齢化社会の最大の問題は、社会保障給付の増大を通じて財政赤字が拡大することなのである。

 2011年度予算においては、基礎年金国庫負担率引き上げの財源が問題とされているが、恒久財源の手当てができず、再び臨時財源に頼ることが検討されている。国庫負担率引き上げはすでに2004年度に行われた措置であり、「恒久財源の手当てが必要」と法律に明記されているのに、それが実現されないままに放置されてきた。2011年度予算を決める今年は、法律に明記されている最終時限であるにもかかわらず、それが実行できないのである。これは、日本の財政が制御不可能な事態に陥っていることを明らかに示す証拠だ。

 消費税率を20%以上引き上げても財政再建はできないことを前回述べたが、現実は、5%の引き上げもままならない状態なのである。

個人金融資産の残高は国債の担保にはならない

 「国債が増えても、その消化に問題はない」とする考えがある。その根拠として言われるのが、「日本には1500兆円を超える個人金融資産があるから大丈夫」、あるいは、「個人金融資産から負債を差し引いた純金融資産1250兆円の範囲内までなら、国債残高を増やせる」ということだ。しかし、この考えは誤りである。

 その理由は、個人金融資産は、手つかずの資金ではなく、すでに「使われて」しまっているからだ。たとえば銀行預金は、すでに企業への貸出しなどに廻っている。だから、金融資産がいくらあろうと、「大丈夫」ということにはならない。個人金融資産は、国債残高の担保にはならないのである。

 国債を消化するためには、一般政府部門の債務増加に対応して、他部門でネットの資産残高が増加しなければならない。以下で述べるように、90年代までは、家計の預金が増加することでそれが実現されてきた。しかし、その後は、その構造は変化しているのである。そこで、以下では、部門別の資産・負債の変化を通じてどのように国債が消化されてきたのかを見ることとしよう(【図表1】参照)。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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