三方、何れもダメ
政治の世界が情けない状況になってきた。より正確にいうと、元々情けない状況だったのだろうが、それを覆い隠すことができなくなってきた。
菅直人首相は、小沢元幹事長と会って同氏に政治倫理審査会への出席を要請した。ここのところ、「決断する首相」を演じようとしているかに見える。しかし、一連の小沢氏を巡る民主党執行部の動きは、有効には見えない。
小沢氏は、政治倫理審査会への出席を拒否する態度を明確にしていて、同会への出席は任意なのだから、政治倫理審査会への出席を争点にしても状況は打開されない。執行部側は、小沢氏の民主党除名にまでことを運んで、内閣支持率の浮揚をはかるつもりかも知れないが、「小沢いじめ」の効果もそろそろ賞味期限切れではないか。
民主党が一から作ることができたはずの予算を財務省に丸投げし、尖閣沖問題での不手際の総括をせず、小沢氏叩きで人気を得ようとする民主党政権の目先の駆け引きに気づいて、国民は既にうんざりしている。
また、小沢氏も現代の政治家として非力だ。政倫審への出席を、「裁判で説明するから」、「それで選挙が勝てるわけではない」といった不可解な理由で拒否しているが、政治家なのだから、政倫審なり、記者会見なりの場で、国民にいくらでも説明すればいい。やましいところがないなら、証人喚問でも何でも受けて、さっさと決着をつけてしまえばいい。
あるいは、小沢氏が自ら離党してしまえば、菅政権は唯一の攻め手を失う。同じく起訴された、元秘書の石川議員を離党させたのだから、親分である小沢氏が自ら離党することは筋が通っている。
小沢氏が刑事被告人として、不利益になることはやりたくない、という事情は分かる。一個人に対しては、同情もしよう。しかし、状況は政治的な闘争なのだから、政治家本人が弁論から逃げ回っている時点で負けだ。子分を使った駆け引きだけができても、本人が支持されない以上天下は取れない。政治家として、本当に「一兵卒」レベルでしかない。
菅政権が支持を失ったきっかけとしては、仙谷官房長官が中国当局者との裏交渉でビデオ非公開などの不当な条件を呑んだと報じられた、尖閣沖問題での不手際が決定的だった。