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元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

韓国、機密漏洩問題で「統治不能」の絶体絶命

武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
【第12回】 2016年11月2日
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朴槿恵大統領が、親友とされる崔順実氏に機密文書を流出させた問題で、街頭には退陣を要求する数万人規模のデモが繰り広げられている Photo:Yonhap News/Aflo

 朴槿恵・韓国大統領が、親友といわれる崔順実(チェ・スンシル)氏に機密文書を流出させた問題で、重大な危機を迎えている。検察当局は、大統領府への強制捜査に踏み切り、資料を押収した。崔順実氏は検察に呼び出され、逃亡の恐れがあるとして身柄を拘束され、逮捕された。

 朴大統領に対する支持率は10.4%にまで急降下し、首都圏では一桁にまで落ちた。街頭には数万人規模のデモが繰り広げられ、朴大統領の退陣を要求している。朴大統領がこうした窮地に陥った背景、この窮地にどのように対処しようとしているのか、今後の韓国の政治、安全保障をどう見るのか。今後紆余曲折は大きいと思われるが、とりあえずの所見を申し述べたい。

謝罪会見にも納得せず
大統領退陣要求デモも

 朴大統領の青瓦台(官邸)が政府の機密情報を民間人である崔順実氏に漏らした問題は、崔氏が設立したミル財団(文化支援財団)とKスポーツ財団(スポーツ支援財団)をめぐる疑惑を韓国のメディアが追っている中で明るみに出た。二つの財団は短期間のうちに財界から800億ウォン(72億円)の寄付金を集めたことから青瓦台が財閥系企業に働きかけたことが疑われている。加えて、崔氏は側近を財団の理事や職員に送り込み、崔氏が実質的に所有するドイツと韓国の会社を通じ財団の基金を引き出す手法で財団を私物化したとして、資金の流用疑惑が浮上している。

 崔氏は財団を巡る疑念が明るみに出ると韓国を出国し、ドイツなどに潜伏していたといわれる。しかも、ドイツへの逃亡には青瓦台の職員の関与を指摘する向きもある。崔順実氏は事態が朴大統領に及ぶと緊急に帰国し、検察の出頭要請に応じた。

 韓国のマスコミは、財団疑惑を調査する過程で、崔氏が事務所ビルの管理人に処分を依頼していたパソコンの中に、大統領の演説文など44個の文書が保管されているのを発見した。そして、この演説文に崔氏が筆を入れ修正していたと指摘されている。

 文書漏洩が発覚した翌日、朴大統領は事態の早期収拾を図るため、謝罪会見を行ったが、大統領を補佐するスタッフが揃うまで、一時的アドバイスを受けていたものであると説明した。しかし、こうして大統領の説明を国民は納得せず、かえって怒りを増幅させ、大統領支持率は10.4%と謝罪会見のときよりも下落した。それと呼応するように、大統領の退陣を要求する大規模デモが頻発するようになった。

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武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」、「韓国の大誤算」(いずれも悟空出版)。


元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

冷え込んだままの日韓関係。だが両国の国民は、互いの実像をよく知らないまま、悪感情を募らせているのが実態だ。今後どのような関係を築くにせよ、重要なのは冷静で客観的な視点である。韓国をよく知る筆者が、外交から政治、経済、社会まで、その内側を考察する。

「元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」」

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