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子育ての才能を引き出す子育ての法則 辻井いつ子

辻井伸行はなぜ17歳でショパンコンクールに出場できたのか

辻井いつ子
【第3回】 2016年11月7日
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子どもをよく観察し、個性を伸ばすために刺激を与え、やりたいことサポートすることで本人が自信をつける。これは、ピアニスト・辻井伸行さんの母、いつ子さんの子育ての法則だ。3回シリーズのラストの今回は、世界最高峰のコンクールへの挑戦と挫折、そこで見えたことを綴ってもらった。(「辻」は一点しんにょう、以下同)

二人三脚で歩んできた辻井親子

躊躇せず送った1本のテープ

 「伸くん、今度の春にパリでデビューしないか?」

 伸行が14歳の時に、こう声をかけてくださったのは、世界的な指揮者・佐渡裕さんです。佐渡さんは、まだ中学生だった伸行に、パリの伝統あるコンサートホール「サル・ガボー」でのラムルー管弦楽団の定期演奏会に招いてくださいました。そして、佐渡さん指揮のもと、パリで初の演奏が実現したのです。国内でも、ご自身が芸術監督を務める「兵庫芸術文化センター」のコンサートなどに呼んでくださり、伸行がプロデビューした後は、一緒にCDを出させていただくなど、本当にお世話になっています。

 思えば、伸行は実に「出会い」に恵まれていたと思います。多くの方の助けがなければ、伸行はプロとして演奏できていたかどうか分かりません。しかし、その出会いの多くは偶然ではありません。

 例えば、佐渡さんと出会ったきっかけは、私が起こしたアクションでした。親しくしていたライターの方が、たまたま佐渡さんの取材をしていると知り、「佐渡さんに聴いてほしい」と、伸行の演奏を収めたテープを渡していただくよう依頼したのです。その方に「佐渡さんのところには、こういうテープが沢山来ているから聴いてもらえるかどうか分からないよ」と言われましたが、万が一にも聴いていただけたら大ラッキーだと思いました。

 私は、こういう時には迷わず進みます。「どうせダメだろう」と何もしなければ決して道は開けません。「ダメでもともと。とにかくやってみよう」という思いでした。

 幸い、佐渡さんはテープ聴いてくださいました。あまりにも多くのテープが届くので、お風呂に入りながら聴くことしかできなかったそうですが、伸行のピアノが流れるとすぐに「すぐにこの子に会いたい、演奏を生で聴きたい」と思ってくださったそうです。

 その年のクリスマス、演奏会後の佐渡さんの楽屋を訪ね、中学1年生の伸行は備え付けのアップライトのピアノで演奏しました。ふと気づくと、私の横で聴いていた佐渡さんが大粒の涙を流していました。この日以来、「伸くんのためなら、何でもやるよ」とおっしゃって、変わらぬお力添えをいただいています。

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辻井いつ子

1960年、東京生まれ。東京女学館短大卒業後、フリーのアナウンサーとして活躍。長男・伸行が生後まもなく全盲とわかり、絶望と不安のなか、手探りで子育てをスタートするが、「明るく、楽しく、あきらめない」をモットーに、持ち前のポジティブさと行動力で伸行を育てる。つねに子どもの可能性を信じ、よく見て、ほめる「親ばか」の子育てで、生後8ヵ月で伸行の音楽の才能を見つけ、プロのピアニストへと二人三脚で歩む。現在は、自分の経験をもとに各地で公演活動を行う。またTBSラジオ「ミキハウス presents 辻井いつ子の今日の風、なに色?」のパーソナリティも務める。著書に『今日の風、なに色?』『のぶカンタービレ!』『親ばか力~子どもの才能を引き出す10の法則~』(いずれもアスコム刊)がある。

公式サイトhttp://kosodate-hiroba.netkosodate-hiroba.net


子育ての才能を引き出す子育ての法則 辻井いつ子

スポーツに限らず、子どもに眠る「秘めた才能」を見抜くのはなかなか難しい。そうしたなかで、我が子の才能を見つけ、伸ばした親はどのような方法を取ったのだろうか。ピアニスト辻井伸行さんの才能を幼い頃に見出し、二人三脚で世界的ピアニストに育て上げた術を母・辻井いつこさんにその秘訣を聞く。

「子育ての才能を引き出す子育ての法則 辻井いつ子」

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