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山田厚史の「世界かわら版」

トランプ大統領を待つ米国分断社会の板挟みという茨の道

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第122回】 2016年11月10日
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トランプ大統領の行く手には分断社会の修復や外交・内政のリストラという困難な仕事が待つ Photo:REUTERS/AFLO

 一年前は「泡沫候補」だった。ドナルド・トランプは共和党の予備選挙で弾みをつけ、まさかの勢いで第45代米国大統領の座を射止めた。不動産王といっても政治は素人。「床屋談義」のような型破りな発言で大衆を煽る政治家が世界のリーダーになる。「世界の保安官にはならない」という本人に、その自覚はあるだろうか。トランプの登場は、アメリカが「超大国」から「一つの大国」に降格する始まりとなるだろう。「アメリカ支配」を前提に保たれてきた世界秩序に激震が走る。

強者の論理の行き着く先が
弱者のトランプ支持だった

 トランプを勝たせたのは分断されたアメリカ社会に漂う不機嫌な気分ではないか。既存の政治家による支配を覆さなければ偉大なアメリカは戻ってこない、と不安を抱える白人層の郷愁に訴えた。底流には中産階級の崩壊がある。

 内陸部の工業地帯では工場労働者の職場が脅かされ、都市部でも企業のリストラで中間管理職が減る。雇用の構造は一部の知的職業と、その他大勢の安い労働に分極化している。大学を出ても安定した仕事を確保するのは至難の業だ。工場のラインで働けば家族が養えて郊外に戸建て住宅、という暮らしも難しくなっている。資本が国境を自由に軽々と超えるグローバル化、機械がとって代わる技術革新、そして労働コスト切り詰めに熱心な経営者。資本にとって効率的であることが人々の不安を煽っている。

 安倍首相は「日本は世界一企業が活動しやすい国を目指す」と言ったが、アメリカこそ「企業が活動しやすい国」である。移民が自己責任で築いた国、規制を嫌い、効率を重視し、小さい政府で企業の利益を妨げないことを大事にしてきた。

 経済学でいう「合成の誤謬」がアメリカで起きている。それぞれの企業が最適とする効率化を進めてきた結果、企業の外に非効率(失業)をまき散らし、貧困の放置や治安の悪化が社会を劣化させた。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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