商品市場で、農産物の高騰が顕著になってきた。なかでもコーヒー、大豆の国際価格は、昨年7月以降で40~50%上昇、粗糖に至っては約2倍に跳ね上がった。

 これを受け、卸や最終製品の値上げが相次いでいる。キーコーヒーは3月からレギュラーコーヒー製品を平均で15%値上げ、AGFも2月17日から一部商品の約9%減量を発表した。油脂メーカー各社は、原料の大豆油や菜種油などの高騰を理由に、揃って1月から食用油を値上げ。値上げ幅は家庭用で1キログラム当たり30円以上、業務用では1斗缶当たり500円以上(約15%)に及ぶ。また製糖各社も、昨年11月末に約4%の値上げを発表した。油脂、製糖の値上げ発表は昨年来で3度目となる。

 今のところは、最終製品への波及は一部にとどまる。コーヒーでは、調達形態や製品内容の違いもあり、キーコーヒーとAGF以外の関連各社は“様子見”の状態だ。業務用のコーヒー、食用油、砂糖の値上げは関連企業や飲食店に打撃必至だが、現時点では交渉中、あるいは現在の契約満了後にあらためて検討という段階で、外食や飲料、菓子メーカー各社は、当面価格改定などはないとする。消費低迷の状況下で、価格転嫁は売り上げを落とすことになりかねず、交渉は簡単にはいかないだろう。

 もっとも、いずれの企業も「今後も相場の高騰が続けば、考えざるをえない」と口を揃える。

 コーヒーは過去12年、粗糖は過去28年で最大の高値圏であり、大豆やトウモロコシなども、2008年の“商品バブル”時に迫る勢いだ。問題は、これが持続するか否かである。

 昨年12月に商品相場が軒並み急上昇したのは、明らかに米国の量的緩和による“カネ余り”で、投機資金が流れ込んだ結果だ。しかし、09年以降続いている農産物価格上昇の主因は、それとは異なる。「たとえば粗糖では、ヘッジファンドは昨年5月までの急落で大きな損失を被り慎重になっている。取組高も増えておらず、足元ではファンド資金はさほど入ってきていない。コーヒーも同様」(翁田紘希・住友商事総合研究所シニアエコノミスト)。

 高騰の主な要因は、南米、インド、カナダ、米国など各生産国で天候不順が続いていること、そして新興国での需要増による、需給の逼迫だ。天候不順での供給不安は短期的要因であり、「いずれ解消すれば相場の上昇は止まる」(平山順・日本先物情報ネットワーク主任研究員)が、需要増は構造的である。「農産物は、供給を増やすにもリードタイムが要る。今後5~10年は、全般に強気相場になるのではないか」(翁田シニアエコノミスト)。相場は、「ある程度の水準で高止まりする可能性が高い」(平山主任研究員)との見方が趨勢だ。

 関連各社、なにより消費者は、厳しい1年を迎えることになりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)

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