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佐高 信の「一人一話」

『住友銀行秘史』の著者、國重惇史のあっけらかん

佐高 信 [評論家]
【第59回】 2016年11月21日
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 話題のベストセラー、『住友銀行秘史』(講談社)の著者で元同行(現三井住友銀行)取締役の國重惇史は、鼻と口に大きなアザをつくって現れた。酔っ払って転び、大地とキスしたらしい。30針も縫ったとか。『週刊金曜日』での私との対談用の写真を撮るカメラマンに、「あとで修正してくれよな」と頼んでいる。

手袋をして告発文を投函

 國重は10月10日付の『朝日新聞』「ひと」欄に取り上げられているが、その中に「住銀取締役などを経て楽天副会長を務めたが、2年前に女性問題で辞任」とある。

 そんな國重に、どんなタイプの女性が好きかと尋ねると、一言、「タイプはありません」という答が返って来た。

 國重も私も1945年生まれ。同い年に吉永小百合がいるが、國重は彼女も好きだったらしい。

 住友銀行でエリート街道を歩きながら、内部告発の手紙を書いたと言えば、たくましくて厳(いか)めしい男を想像するが、ほとんど無手勝流のあっけらかんである。事件が起こった1990年から91年当時、大蔵省銀行局長・土田正顕に宛てた内部告発文を読むと、もちろん緻密さはあるが、チマチマ計算してはいない。当時、私は「イトマン事件」渦中のその住銀を取材していて、國重が書いた告発文を手に入れようと躍起になっていた。コピーのコピーを入手して、次のような箇所を引用した。

 そう告白すると、國重は「言ってくれれば」と笑う。しかし、そのころは國重は自分が書いたと明かしてはいないし、私も面識がなかったのだから無理な話である。

 そんな冗談をとばすほどに、國重は重々しくない。小柄でネアカ、それが女性にモテる秘密でもあろう。さて、告発文である。

 「伊藤萬(イトマン)株式会社従業員一同」名義の第3号で、彼はこう訴える。

 「私どもは、この1ヵ月の間、ご当局の動きを固唾をのんで見ておりましたが、土田さん、本当に失望させられました。大蔵省というのは、結局、問題を解決する能力も責任意識もないエリート達の集団なのでしょうか。

 いいですか、土田さん。当社の不動産事業部門である企画監理本部は、いま100人います。河村(良彦)社長と伊藤(寿永光)本部長は、この100人のルートを使って、都市部といわずリゾート地といわず、不動産を買って買って買いまくると公言しています。近い将来には、このスタッフを500人に増員して、体制を大幅に強化するとも言っています。このような動きが、現在、政府が進めている土地政策と真っ向から対立してしまうことは明らかでしょう」

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佐高 信 [評論家]

さたか・まこと 1945年山形県酒田市生まれ。評論家、『週刊金曜日』編集委員。高校教師、経済雑誌の編集者を経て評論家に。「社畜」という言葉で日本の企業社会の病理を露わにし、会社・経営者批評で一つの分野を築く。経済評論にとどまらず、憲法、教育など現代日本のについて辛口の評論活動を続ける。著書に『保守の知恵』(岸井成格さんとの共著、毎日新聞社)、『飲水思源 メディアの仕掛人、徳間康快』(金曜日)など。


佐高 信の「一人一話」

歴史は人によってつくられる。ときに説明しがたい人間模様、ふとした人の心の機微が歴史を変える。経済、政治、法律、教育、文化と幅広い分野にわたって、評論活動を続けてきた佐高 信氏が、その交遊録から、歴史を彩った人々の知られざる一面に光をあてる。

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