企業が実施義務を負う、社員の「ストレスチェック」の期限が迫っている。社員に無理矢理実施させ、社員のストレスを増加させている企業も散見される。ストレスチェックをやれば、社員のメンタルヘルス管理ができるというものではない。特に人に関するストレッサーをなくすこと、そのための業務指示やコミュニケーションの改善が不可欠なのだ。

ストレスチェックが
ストレスを生む本末転倒

 50人以上の事業所に対して義務化されたストレスチェック。実施の期限が、今月末に到来する。期限までに実施しなければと、あわてて実施する企業が増加。「必ず実施しろと、突然通知があった」「法律で定められた義務だと強要された」「実施するまで毎朝督促メールが届いて気が重くなった」「一斉の督促メールで、未実施者である自分のメールアドレスが公開された」…という経験をした人も少なくないに違いない。

ストレスチェックを社員に押し付ける人事部の本末転倒ストレスチェックのような法律への対応のみに精を出し、肝心の現場でのさまざまな調整を疎かにする人事部は多いが、それでは何の実績も上がらないだろう

 これらの例は、いずれも実例だ。やり残した宿題を、夏休み終盤にあわててやろうとする小学生ではあるまいし、期限間際に突然社員に振るとはどういうことか。

 それも、労働安全衛生法でストレスチェック実施義務を負うのは、企業であり、社員ではないにもかかわらず、宿題の担い手を転嫁するかのごとく、社員に実施することを強要している。

 言うまでもなく、ストレスチェックは、社員のストレス状態を知り、職場の改善などにつなげるための取り組みだ。しかしこれでは、ストレスチェックが、社員に新たなストレスを産むという事態になってしまっている。

 法律で決まったから、その目的がどうであろうと、社員がどう受け止めようと、それをしっかり堅確に実施することが人事部の役割だと思い込み、人事部はそれさえすればよいという、人事部のお役所マインドが引き起こしたトンデモ事態だ。

 このように言うと、「原因を解決するのは産業医の役割であり、人事部の役割ではない」という答えが返ってくる。もちろん医師の資格でしかできないことはあるが、人事部ができることもあるはずだ。それをできる範囲でやらないで、何のための人事部なのだろうか。