ブラッドリー効果は、オバマのときにもありました。黒人に投票することを公言しない。だから実際の票が世論調査より多く出た。今回の選挙では、最終局面での世論調査から2ポイント動きました。クリントン氏の勝利という調査ばかりだったのですが、2ポイント動くことでひっくり返った。

 もうひとつが棄権です。特にアフリカ系とラテン系の投票率が、55%と非常に低かった。これがトランプ有利の状況を支えました。

 オバマ大統領は、マイノリティが棄権に向かうとクリントン氏が負けると読んでいた。だから彼は選挙戦の後半で、連日のように演説して、特にマイノリティに投票を強く呼びかけました。それが一番の弱点だと分かっていたからです。

──そして、マイノリティの棄権が多かった一方で、白人のブルーカラーの票がトランプ氏に集まったと指摘されています。

 前から分かっていたことでしたが、保護貿易、孤立主義という政策に強く反応するのが白人のブルーカラー層でした。白人、男性、非大卒、そして年齢が高い層です。

 ただ、民主党の牙城であるミシガン州、ウイスコンシン州、あるいはペンシルバニア州といった地域まで、彼らの票で切り崩されるかとなると、それは難しいだろうと思われていた。トランプ氏に票は流れるだろうが、選挙結果を変えるまでには至らないだろうという予測が大勢を占めていたのです。

 ところが、1回の選挙でそれが崩れてしまった。これは、民主党にとっては大変な危機です。自分たちの基盤が動いたわけですから。

 もっとも共和党も、元々あった宗教保守、社会保守の勢力と、伝統的な東部財界の政党としての主流派に分裂して、ひとつの政党という体裁がなくなっていたところに、外から来たトランプ氏に乗っ取られている状況です。トランプ氏は共和党の中に基盤を持っているわけではなく、選挙戦は専らメディアに頼っていた。基盤となる集票組織はなく、その点においてもクリントン氏とは比較にならなかった。

 しかし、白人ブルーカラーの間でトランプブームが起き、彼がどんな暴言をしても支持が揺るがない固い核ができた。こうした有権者の動きが、これまでの共和党の基盤とは異なる新しい層を呼び込むことになったわけです。

 今後の焦点は、共和党がトランプ氏とどういう関係をつくっていくか、です。トランプ氏は何といっても勝ったわけですから、共和党と協力する中で、政権の中枢に自分たちのメンバーをどう組み込んでいくか。1月までにつばぜり合いが起こるでしょう。