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田中均の「世界を見る眼」

日本がトランプの米国と徹底協議すべき4つの課題

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第61回】 2016年11月16日
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ポピュリズムを利用したトランプ氏
実際の政策の行方は

 米国大統領選におけるトランプ氏の勝利は世界を驚かせた。私自身を含め内外の多くの識者は、米国に存在している深い亀裂と既成政治家に対する反感の強さを十分読み切れなかった。

 グローバリゼーションはモノ・ヒト・カネが国境を越えて自由に動き回る結果、一方では中国やインドといった新興国の急速な台頭を生み、とりわけ先進国では富める者と貧する者間の大きな所得格差、地域格差、移民や外国労働者の大量の流入を生み、社会に大きな亀裂をもたらした。これがナショナリズムや排外主義、反イスラムといった国民感情の高揚に繋がった。

 このような国民感情の高揚を巧みに利用し、政治に繋げていく所謂ポピュリスト政治家が力を持つようになった。これらのポピュリスト政治家はキャンペーンにおいて多くの場合に誇張された表現を使い、「敵か味方」かの黒白をつける傾向を有し、キャンペーンを成功させた。また、大衆へのコミュニケーションにはもはや新聞・雑誌・テレビなどの伝統的メディアではなく、僅か140文字という極めて短い字数のツイッターなどのSNSが使われ、論理的思考よりも短い結論が重要となった。

 英国のEU離脱(BREXIT)や米国大統領選挙はポピュリスト的成功の典型的な例であるが、これに止まるものではない。欧州全域において生まれつつある極右勢力や極左勢力、或いはフィリピンにおけるドゥテルテ大統領の成功、ロシアにおけるプーチン大統領の人気の高さはポピュリズムの例であろう。

 しかし今後最も重要であるのは、トランプ大統領がどのように米国を導いていくかであろう。選挙キャンペーン期間中の諸々の発言を実行に移せば米国は世界の孤児になるばかりか米国自身が依って立つ世界の秩序を崩壊させることになる。選挙に勝つためのキャンペーンレトリックと大統領になってからの実際の政策は違うのだろう。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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