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トランプがつかんだ米国庶民の本心、前駐米大使が語る

藤崎一郎 [前駐米大使・上智大学特別招聘教授]
2016年11月11日
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Photo:Abaca USA/AFLO

ワシントンの中心からは
わからなかった本当のアメリカ

 思わぬ結果である。選挙は水物というが本当だった。なぜこうなったか、どうすればいいか、考えてみよう。

 今年4月にアメリカに行った。ワシントンで、私が駐米大使を務めていた頃から旧知の元議員、長官などの高官、シンクタンクの友人らと会った。ずいぶんたくさんの人に会ったが共和党の人を含め誰一人トランプ支持者はいなかった。

 一方、飛行場でトランプの本を求めた。機中で読んでいると年配のCAたちが「それいいでしょ」と寄ってきた。ヒラリーは信頼できないけれどドナルドは正直そうだと言う。アマゾンでほかのも取り寄せて読んでみた。似たようなものだ。つじつまの合わないところもあるが、とにかく格段に読みやすく数時間で読める。

 「そうか、495ベルトウェイ(ワシントン周囲の環状高速道路495号線)の中にいると本当のアメリカはわからないというのはこのことだったんだな」と実感した。米国全州を回ったが、多くの場合に会うのは指導層の人ばかりで、街の人と政治談議することは少なかったので、目からウロコが落ちる気がした。

巧妙に“いいとこどり”した
トランプの選挙戦

 トランプ勝利の理由は、オバマが8年前に勝ったときと同じだ。アメリカ国民がチェンジを望んだからだろう。クリントンは8年前同様「継続の旗手」に仕立て上げられた。底辺に米国民の格差拡大、生活が向上しないことへの不満があることは確かだ。

 しかし、その上、トランプはじつに巧妙に“いいとこどり”した。共和党のこれまでの基本政策の小さな政府を前面に押し出さなかった。社会保障の維持、金持ちへの増税・中低所得者への減税、自由貿易反対は、むしろ民主党寄りの政策である。他方、国家債務の減少、移民・マイノリティなど弱者への配慮過多の抑制の必要については従来からの共和党のスタンスを維持した。一言でいえば国民の聞きたがっている音楽、内向きのメニューをうまく取り揃えたのだろう。

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藤崎一郎 [前駐米大使・上智大学特別招聘教授]

1969年、外務省入省。アジア局外務参事官、在米大使館公使、北米局長、外務審議官を経て、2005年在ジュネーブ国際機関代表部大使、2008年駐米特命全権大使。2012年11月退官。2013年より上智大学特別招聘教授・国際戦略顧問、慶応義塾大学特別招聘教授、一般社団法人日米協会会長等を務める。

 


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