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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

トランプショックと英EU離脱に見る「世論調査の罪」

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第49回】 2016年11月12日
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Photo by Keiko Hitomi

 11月8日の米国大統領選で、大方の“予想”を裏切って共和党のドナルド・トランプ候補が当選した。金融市場では、そもそも「トランプリスク」といわれ、リスクオフ(リスク対応)モードになってはいたが、それでも「トランプショック」が発生し、市場は乱高下した。

 遡れば今年6月23日には英国での国民投票でブレグジット(英国のEU離脱)が、これも大方の“予想”を裏切って決まった。金融市場は当然、乱高下している。どうしてこのようなことが起こるのか。

世論調査に問題あり

 このような大きな案件の“予想”は、世論調査によって形成されている。この世論調査が問題なのである。今回の選挙もワシントンの公的機関に所属する友人たちと情報交換をしていたが、彼らも同意見だ。

 民主主義国家の国民は法的には平等だ。しかしそうは言っても経済的には階層(階級)があり、上流・中流・庶民と分けることができる。現在の一流マスコミの世論調査は、このうち上流と中流の階層から情報を取ってきており、庶民の層がその対象となっていないのではないか。庶民の層は世の中に不満を持っており、彼らがとにかく変化を求め、トランプもブレグジットも賛成した。彼らの声は世論調査には反映されことなく、選挙の開票当日になって突然"姿を現す”のである。まさにそのような問題が具現化している。

 特に金融市場では、経済指標の発表でもそうだが、相場は予想(期待)と現実のギャップで動く。国政レベルの選挙でも、まさにそのような状況になっているのである。

 ちなみに英国の場合、政治的に国民投票をする必然性はない。キャメロン元首相が大丈夫だろうと思い決めたものである。最近、別途議会の承認が必要ということになり、そもそものEU離脱自体がどうなるかわからなくなっている。

 国民投票の時も、大衆紙『SUN』が 直前に(真偽の程は不明であるが)「女王陛下は離脱を望んでいる」と報道したことも原因の一つである。庶民の階層に大きく響いたのである。

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宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

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