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生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

「働いたら損をする」仕組みが生活保護制度を歪めている

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第71回】 2016年11月18日
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生活保護の原則は「本人が持てる能力その他は活用することを要件として、最低生活に足りない費用は穴埋めする」ということだ。働ける状態ならば働くことを求められる。では翻って、生活保護は受給者の就労をより容易にしていると言えるのだろうか。

生活保護制度が抱える
「働いたら損」の仕組み

生活保護の原則は、働ける状態ならば働くこと。では、生活保護の仕組みは本当に受給者に就労を促しているだろうか。そこには大きな制度的欠落が見える

 今回は、生活保護と「働くこと」の関係について、そもそも制度が働きやすいものになっているかどうかからチェックしてみよう。

 生活保護法の第4条には「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」とある。「生活保護は怠け者にまでお金をあげる制度」「生活保護があるから甘えて働かなくなる」という意見は根強いし、そう見られても仕方のない実態は一部・少数といえども存在する。しかし最初から、「働ける人は働く」が前提とされている上、就労に向けての助言・指導も行われる。「税金で安心して怠けていられる制度」というわけではない。

 では、生活保護で暮らしている人々が就労し始めたら、暮らし向きはどうなるのだろうか。生活保護で暮らしている人が就労収入を得た場合、そのとき手元に残る収入を比べてみよう。なお就労収入からは、予め社会保険料・所得税・労働組合費・通勤費の実費交通費が差し引かれる。

 単身者の場合、1万5999円までは「就労収入-必要経費=手元に残る収入」となるのだが、それ以上の収入を得ると「収入認定」が行われ、4000円多く稼ぐごとに400円だけ手取りが増える計算となっている。稼げば稼ぐほど、就労によって得た収入のうち自分のものにならない分(収入認定される分)は大きくなってゆき、たとえば10万円の就労収入を得た場合には7万6400円、15万円の就労収入を得た場合には12万1600円にも達する。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

生活保護当事者の増加、不正受給の社会問題化などをきっかけに生活保護制度自体の見直しが本格化している。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を紹介しながら、制度そのものの解説。生活保護と貧困と常に隣り合わせにある人々の「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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