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野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る

トランプの経済政策で懸念される円安と金利上昇

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第11回】 2016年11月24日
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 アメリカ大統領選でドナルド・トランプ氏が勝ち、大方の予想に反して円安が進行した。こうなったのは、減税やインフラ投資が行なわれるとの期待によって、アメリカの金利が上昇したからだ。

 では、今後さらに円安が進むのだろうか? 以下では、為替レートにはいくつかの不透明な要素があることを指摘する。

トランプ氏の経済政策
財政赤字拡大で金利上昇

 トランプ氏の経済政策はつぎのようなものだ。

(1)法人税率を現在の35%から15%に引き下げる。
 アメリカ連邦法人税収は2013年度で約2800億ドルであり、15年のアメリカのGDPは約18兆ドルなので、減税額はGDPの1%程度になると考えられる。

(2)アメリカ企業(とくにIT企業)の海外留保利益を、アメリカ国内に還流させる。国内に持ち込む際にかかる税金(repatriation tax)を10%にする。ただし、一定期間(タックスホリデー)に限る(なお、アメリカの企業は、約2兆ドルの資産を海外に保有していると言われる。これは、アメリカでもヨーロッパでも問題とされている。EUは、16年8月末に、Appleに対して145億ドルの追加納税を命じた)。

(3)個人所得税の最高税率を39.6%から25%に引き下げる。

(4)以上を合わせると、減税額は、10年間で6兆1503億ドルとされる。

(5)10年間に1兆ドル規模のインフラ投資を行なう。

(6)減税とインフラ投資で、当初は10年間で10兆ドルの歳入不足が発生すると懸念されていた。しかし、個人所得税の減税幅を縮小することなどにより、不足幅は4兆~5兆ドルに留まると見られている。これは、年率で、GDPの2.2~2.8%程度だ。12年度の財政赤字の対GDP比は4%程度なので、これがかなり膨らむこととなる。

 このため、長期金利が8%台に跳ね上がるとの予測もなされている。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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 日本が直面している課題は、実体経済をいかにして改善するかである。それは金融政策によって実現できるものではない。
 金融緩和に依存して長期的に衰退の道を辿っているヨーロッパ大陸諸国と日本。それに対して、新しい情報技術をつぎつぎに開発し、高度なサービス産業に特化して成長しつつあるアメリカとイギリス。両者の差は、イギリスのEU離脱によって、具体的な 形を取りつつある。
 日本はいま、基本的な成長のパタンを大きく変更しなければならない。これは、純粋な研究開発だけの問題ではない。企業の仕組みや社会全体の構造が重要な役割を果たす。

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