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岸博幸のクリエイティブ国富論

財政再建=消費税増税ではない

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第124回】 2011年1月28日
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 政府の消費税増税キャンペーンがいよいよすごくなってきました。1月21日に内閣府が発表した「経済財政の中長期試算」など、政府が出す情報は増税に向けた機運の醸成を狙ったものばかりですし、一部の新聞もそれに乗ってしまっている感があります。そうしたキャンペーンに惑わされないよう、今回は基礎的なおさらいをしたいと思います。

 まず何よりも大事なのは、“財政再建=消費税増税”ではないということです。政府が国民に刷り込もうとしているこの図式は、あまりに短絡的すぎます。正確には、“財政再建=増税+増収(経済成長による税収増)+歳出削減”
でなくてはいけないのです。

 政府の債務がGDPの2倍弱の規模にまで増加し(政府資産を差し引いた後のネット債務はそこまで大きくありませんが)、団塊の世代の退職に伴い社会保障負担が将来的に急増することを考えると、ある程度の消費税増税はもはや不可欠です。

 しかし、マクロ経済政策が欠如する中でデフレ・低成長路線で税収が増えず、かつ政府のムダを削減しない一方でバラマキを続けて予算の規模が膨張しているのが現状です。それらを是正しないまま消費税増税だけで財政再建をしようと思ったら、大増税が不可欠となります。そうした“大きな政府”路線は、経済の活力を削ぐだけではないでしょうか。

 だからこそ、本来は、増税と増収と歳出削減が均等に貢献する形での財政再建を目指し、増税幅は最小限に抑えるようにすべきではないでしょうか。それなのに、菅政権は増税ばかりに肩入れしているのです。

成長による増収の効果は大きい

 ここで、成長による増収について考えてみましょう。

 内閣府が1月21日に発表した「経済財政の中長期試算」を巡る報道では、2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)が23兆円の赤字になると大々的に報じられていました。

 この数字だけからは財政は本当に危機的状況という感じがしますが、この報道を真に受けてはいけません。1%台半ばの低い名目成長率を前提にしている以上、税収の増分が少なくなるので当然の結果です。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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